LadyLuck劇場

3月3日はナンの日?!

2012.3 LadyLuckマスターの誕生日


それは数日前の出来事だった。



カ「七星さーん」

カズノコが、皿を磨いていた七星に声をかける。
 
七「? なーに、カズノコちゃん」
 
カ「あのー」



カズノコちゃんのお尋ね



カ「大人の女性をばせるには、どうしたらいいですかー?」
 
七「なっ?! …カズノコちゃん、それはセリフの字が違うよ!
 というか、突然どうしたの」
 
カ「えへー、実は、麻美様の誕生日をでs
 
言いかけた瞬間、七星は皿を置いてカズノコの口を塞ぐ。
そしてそのまま店の奥に連れ込んだ。七星の目が本気だ。
 



七「カカカカカズノコちゃん?? あなたまさか…マスターの誕生日を??」
 
カ「…あの、知ってます…3月3日…」
 
七「(うわぁーっ!この子にだけは知らせたくなかったのに!!!)」
 
カ「七星さん目が怖いです…何でそんなに気にされるんですか?」
 
七星は小声ながらも血相変えてカズノコに告げる。
 
七「どこで、どこで知ったの?!」

カ「あ…あの…事務所を掃除していたら偶然書類に…」
 
七「 見 て し ま っ た の ね ?」

カ「はい」

七「・・・ 見 ぃ ー た ぁ ー な ぁ ??」(ゴゴゴゴゴゴゴ)

カ「な、七星さんが…スーパー七星さんになってる…!!」



七「いい?!マスターの誕生日はね…絶対の秘密事項なの!
 触れてはいけないことなんだから、絶対に黙ってて!!」
 
カ「えっ 日頃はあんなに人の誕生日は祝うのに」
 
七「と に か く このことは絶対に他言無用だからね!
 外部に漏れたら減給じゃ済まなくなるかもしれないよ!」
 
カ「え、そんなに… わかりましたー」
 
七星が戻り、取り残されたカズノコは首をかしげる。

カ「なんで麻美様の誕生日は秘密事項なのかなぁ?
 でもまぁ、これを知っているのが私だけなら面白いかも。なんか考えよーっと」
 

カズノコも店内へ戻る。すると、その瞬間!



麻美様ラヴァーズ登場



なんと、壁や天井からラヴァーズメンバーが!完全な盗み聞きである。
ユキは壁の中から、柳は天井から、るーは床下から現れた。
 
ユキ「ねぇ、今の聞いた?」
 
柳「なんと麻美様の誕生日が、3月3日だったとは…!」
 
るー「こ…これは…呪u…じゃなくて、祝うべきです…」
 



そして3月3日当日を迎えた。
 

前日遅番だった七星は、マスターの許可を得て2階で泊まっていた。
一足先に着替えて店で準備をしている時に、異変に気がついた。
まだ部屋で寝ているマスターの部屋のドアを、七星が血相変えてノックする。

(ドンドンドンドンドンドン!)

七「大変ですマスター!起きてください!一大事です!!!」
 
眠い目をこすってマスターがのそっと現れた。
 
麻「朝からうるせぇなぁー 何だよ一体 まだ開店2時間前じゃねぇか」
 
七「大変です!外を、外を見てください!!!」
 
麻「わかったわかった 着替えたら行くよ なんだよまったく…」
 
ブツブツ文句を言いながら着替えて店に降りると、外から賑やかな声がする。
 
麻「あん?何だ?こんな朝から外で何やってるんだ?」
 

マスターはドアを開けて、外に出た。
 

麻「おい、うるさいぞ 朝っぱらからなんの騒ぎ… ?!」



「・・・・・」



一同「麻美様ー、誕生日おめでとうございますー!」
 
麻「おい、・・・何の真似だ?」
 
一同の中から、柳が現れた。
 
柳「いやー、麻美様 隠すなんて奥ゆかしい 誕生日ではございませんか」
 
麻「誰の!」
 
柳「あ・さ・み・さ・ま ですよっ ハッピーバースデー」
 
麻「そんなもん知らぬわ!誰の差し金だ!」
 
柳「まぁまぁ、とりあえず主賓でございますのでこちらへ プレゼントが各種」
 
麻「どうせお前らの用意するものなど、ロクなもんじゃないだろが!」
 
そう言うやいなや、マスターの元には巨大なプレゼントが忍び寄ってくる。
箱の中からユキの手足と顔が現れた!

ユ「麻美様ー、誕生日プレゼントに、この私自身を是非もらtt」

麻美様の飛び蹴り炸裂

ドッカ━━━━━━━━━━━━ン!!
 
飛び蹴りでユキを遥か彼方に蹴飛ばした。
 

麻「今すぐ帰れ!解散しろ!」
 

そう言うと麻美様は店の中に入り、店のシャッターを閉めた。
物凄い形相のマスターの矛先は、今度は七星に向かおうとしている。
 

麻「おい七星 あたしの誕生日のことはお前にしか教えてなかったよな?」
 
七「そ…それが…カズノコちゃんが偶然にも事務所で知ってしまったそうで…」
 
麻「なに!カズノコの仕業か! …そういえばまだ出勤してないな」
 
七「そうなんですよ 変だと思いません?
 誕生日だと知ったらいの一番に祝おうと何か仕掛けませんか?」
 
麻「確かにあの連中の中に、カズノコの姿は無かったな」
 
七「ちょっと、家に電話してみますね」
 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

七「もしもし、私、LadyLuckの七星と申します 和乃さんは…えぇ…はい…」
 
 ピッ
 
七「マスター カズノコちゃん、今日部屋から出てきてないそうですよ?」
 
麻「何? なんだそりゃ、どういうことだ?」
 
七「お母さんに聞いたんですが、どうも昨日から部屋に閉じこもってるらしくて」
 
麻「病気か?ヒキコモリか? 漫画の課題は無いよなぁ」
 
七「ちょっと、様子を見に行きませんか?なんか心配です」
 
麻「…だな」
 

2人は地下の倉庫から通じる秘密の抜け道からこっそり出て、外へ出た。
裏口もラヴァーズが固めていると読んでの行動である。
 

麻「さすがに、この場所まではわからんだろうな」
 
七「下水道を経由してますからね…^^;」


途中でタクシーを拾い、清田家に到着した2人。


麻「ほー、ここがカズノコの家か 初めて来たな」
七「私も初めてです じゃあ、行ってみましょうか」
 
 ♪ ピンポーン
 
七星がインターホンを押すと、母親らしき人の声が聞こえた。
 
七「あ、先程お電話した、LadyLuckの七星と申しますが」
カ母「はいー、お待ちしておりました 今(ドアを)開けますね」
 
家の中から出てきたのは、カズノコの母親だった。

麻「はじめまして 店長兼バーテンダーの神です どうぞ宜しく」
七「主任の七星です」

カ母「どうもどうも、和乃の母でございます いつもお世話になっております」
七「こちらこそ、いつも和乃さんには…」 (以下社交辞令)
 
麻「それで、カズノコはどちらに?」 
カ母「部屋にいると思うんですが、声をかけても反応がなくて…」
七「確かにそれは変ですねぇ 入ってもよろしいですか?」
 

カズノコの母に案内され、階段を上がっている間にも七星が質問する。

七「なにか、変わった様子はありませんでしたか?」
カ母「うーん…あー、そういえば最近田舎の実家に行ったんですけど、おばぁちゃんに古い仏具はないか、聞いていましたねぇ…」
七「仏具…?」
カ母「えぇ… なんかリンとか木魚とか貰ったようで…あぁ、それと通販で服を買ってました」
 

LadyLuckで働くこと7年目、長年の勘とネタまみれになった経験から、
七星は非常に嫌な予感を感じずにはいられなかった。


3人は、「KAZUNO」と書かれた部屋の前に立つ。

七「お母さん、ここから先は私たちに任せてください」
カ母「すみません、どうかお願い致します」



麻「おい、なんか部屋から聞こえてこないか?」

七星がドアに耳を当てる。確かに何か聞こえる。

七「マスター、なんか…マスターの名前を呼んでいるみたいです」

麻「なに、それは本当か!」

七「なんか随分間があるんですけど、 あ さ み さ ま  みたいな」

麻「おい、高熱が出てうわごと言ってるんじゃないだろうな…」


 ドンドンドンドン


七「おーい!いるのー?私よ!七星よー!」

麻「こら!カズノコ!さっさと出てこい!」
 

 シーン…

 
麻「しゃーねーな、突入するぞ!」

七「は、はい…」
 

 ガチャッ!
 

麻「おい、カズノk・・・
 

その瞬間、2人の目の前には信じられない光景が飛び込んできた。







目の前でカズノコが、なんとお経らしきものを上げている…
祖母の家から持ってきたと思しき仏具を使い、着物を来ていて本格的だった。


 ボーン
 
 「なーむーあーさーみーさーまー」
 
 ポクポクポクポク…


マスターは完全に凍りつき、七星は絶句してしまった…
 

そのうち、カズノコが土下座のような姿勢をとったあと、立ち上がった。
そして振り向いたところで、ようやくマスター達に気がついたのだった。

カ「あれ?!七星さん 麻美様 なぜここに」

七「聞きたいのはこっちだよ… カズノコちゃん…何をしているの…」

カ「これは大事な麻美様への勤行です なむなむ」

七「目の前にいるじゃん…だから、なんなのこれ… それじゃお葬式よ…」

カ「お葬式だなんてとんでもない まだ麻美様は生きてらっしゃるのに」

七「でも、そういうことでしょ?」

カ「違います 葬儀しかしない葬式仏教と一緒にしないでください 本を見て勉強したんですから」

七「はぁ でも、何で急に仏教に?
 普通、南無阿弥陀仏とか南無妙法蓮華経とかじゃないの?」

カ「既存の仏教は生きている人のための宗教じゃないから今の宗教はダメなんです」

七「えっ?!」

カ「そこで私、麻美様教なるものを設立することにしました。本日3月3日を立教開宗として…」

七星は目の前が暗くなった。
 
七「あ、あさみさまきょう…」

カ「ほら、ですからご本尊も経典もこの通り」

カズノコは手にした経典本を七星に手渡し中身を見せた。


七「本当だ…壁の曼荼羅にも本にも南無麻美様って書いてある…いいのかコレ…」

カズノコは話を続ける。まるで辻説法のように。


カ「数日前聞いたじゃないですか 大人の女性をばせるには…」

七「うん相変わらず字を間違ってるけどね」

カ「思ったんです 麻美様ほどの財力があれば、大概のものは買えるじゃないですか」

七「まぁ…そうねぇ…」

カ「だから、お金じゃなくて かといって体でもなくて それやって失敗しましたので」

七「うん、未公開ネタだねその話…」

カ「ですから、心を示すことが必要なんじゃないかと」

七「だからって…なんでまた仏教…」

カ「ほら、宗教は心の拠って言うじゃないですか
 ですから、心を示すのに一番いいんじゃないかと思いまして」
 
七星はまた頭が痛くなってきた…
 
カ「そこで、今日の麻美様への誕生日には、この麻美様教の設立を捧げようと…」


カ「あー、そうそう 今日は勤行初日ですのでついお勤めが長くなりました
 サプライズにしたかったので黙ってまして遅刻になりそうになって申し訳ないです
 今から行きます」

七星は当初の目的をようやく思い出した。

七「そうだ…私たち…カズノコちゃんを心配して迎えに来たんだった…」

七星にとっては完全に取り越し苦労だった上に、
倍以上の頭痛の種を抱える結果となってしまった。


カ「私、麻美様布教をしながら向かいますので少し遅くなります」



布教スタイル



カズノコは天台笠を被り、錫杖を持って出発の支度をする。

七「あの、つかぬことを聞くけど…そのまま歩くわけじゃないよね?」

カ「もちろん、なむあさみさまと唱えながらの行脚です」

七「あああああ、火に油だわ…((((;゚Д゚))))」
 
カ「さぁさぁご一緒に なーむーあーさーみーさーまー…」

七「・・・」

カ「あぁ 麻美様 改め ご本尊様 どうかわたくしめに後ほど教えを…」


麻「だったら…今この場で教えてやるわ!こんなマネしたらどうなるかってな!


 ブチッ 


遂にマスターの堪忍袋の緒が切れた!

麻「カズノコ…今日という今日は許さん!ヤキ入れてやる!」

七星が慌てて止めに入る。

七「マスター!お、落ち着いてください!!!抑えて!!」

麻「離せっ七星!こいつを文字通り成仏させてやる!どけ!」

マスターは怒りの形相に変化し、ハンドアクスを振り回す。

七「おおおお落ち着いてください!カズノコちゃんのやることですから!」


カ「なーむー、あーさーみーさーまー・・・」


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七星はこの日の夜、自分の日記にこう綴った。


「今日ほど、世の中から誕生日を祝う習慣がなくなればいいのに、と思った日はなかった…」

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