メトロ☆レンジャー

第0話 プロローグ
「メトロレンジャー誕生!」


:NAL
:RAK
:隼鷹
:とわいせるな

(白:ナレーション他)


ここは首都圏のあるところ。
鉄道とパカに長年尽くしてきた功績が認められ、NALはある役割を担う事になったのである。

その辞令を受け、感無量のNALであった。





NALという男…
剛気な侠客で、しかも弱き者には親切で人望も厚い。
その名は遠くにまで鳴り響いている…。






NALはこの日の晩、不思議な夢を見たのである。



それは光り輝く3つの大きな星が、頭上に降り注ぐ夢だった。
後を追うかのように1つの小さな星が続いた。




「夢に出てきた3つの星と、1つの小さな星…これは…?」

「なんとなく気になる夢だ…」



「新指令さま、どうなされました。」

「いや…なんとなく気になる夢を見てな…」

「少し出かけてくる…」




「私のよき右腕となるべき仲間を探す前に見た、あの夢の意味は…」

「降り注ぐ星とはこのことなのか…」

「そうだ、こういうことはRAKに相談しよう。」
「まず彼に声をかけようと思っていたところだったからな…」




RAKという男…
MCビルインターネット事業部を展開する、今ちょっとした話題のIT社長。
鉄道における知力は、NALに決して引けを取らない人物…。





荻窪にあるMCビルにNALが着いた。
旧知の顔見知りの為、NALはフリーパスでRAKのいる執務室まで入る事ができる。
「RAK、いるかい。」

「これはこれはNALさん、何かご用でしたか」
「お越しになられるのであれば、連絡を頂ければすぐにでもお迎えに上がりましたのに」

「うむ、おりいって相談事があってな」

「それでは、こちらへどうぞ」
RAKは、執務室のソファーにNALを案内した。

「相変わらず、本業も忙しい様だな」

「いえいえ…今週はヒマな方ですよ。」
「どうぞ、おかけください。で、相談というのは?」


「実は…」





「なんと、NALさんがそのような大役を?!!」

「おい、声が大きい!」

「なぁRAK、実はキミをメンバーに入れようと考えていたのだよ。」
「その矢先にこの夢見といい、どうしたものだろう…。」


「ふふふ…」
「そう言われたら、オレは既に心を動かされていますよ」

「えっ」

「面白いといえば不謹慎ですが、是非やらせてください。」

「おぉ!」

「新たな観点から首都の平和を守るというのも、面白いですな。」
「オレにピッタリかもしれません。」


「おぉ、やってくれるか!ありがとうRAK!」
「よし、こうなれば早速同士を集める。」

席を立とうとするNALを、RAKが止めた。
「待ってください!こんな大仕事、ただ単に頭数を合わせるだけではいけません!
「心の底から信用のできる者、NALさんと、鉄道の平和の為なら命を捨てても良いと言う者だけで実行すべきです。」

「そうなると、私の知り合いは流れ者か、非鉄ばかりだ…。」
「ふむぅ、誰か気心の許せるものはいないものか…。」

少し考えこんだRAKが口を開いた。
「そうだ、彼ならばいいかな。」

「RAK、心当たりがあるのか。」

「はい、下高井戸の組織“青りんご”に、隼鷹と言う男がいます。

「おぉ、隼鷹なら私も知っている。鉄属性でハードボイルドで勇敢な男だと聞く。」

「NALさんがご存知ならば話は早い。」
「彼とは親しくしている間柄でしてな、早速訊ねて行って相談しましょう。」


「そうか、頼むぞ。」

RAKは、NALの両手を握った。
「あなたの夢が、吉である事を祈ります。」

「ありがとう。」




隼鷹という男…
下高井戸の組織「青りんごスカッシュ(仮)」に身を置くハードボイルドな男…。
古きを好み、その知識も決してNALやRAKに引けを取らない。




ここは東京都世田谷区下高井戸。
商店街の一角にあるゲームセンター「YOUYOU」。通称「下高」。
ここは首都圏のパカラーの多くが入り浸る事で有名な店だ。
川越在住の隼鷹も、そのひとりであった。

YOUYOUに着いたRAK。
店に入る為に、下りの階段を降りる。

「隼鷹、いるか。」

「誰だ!」
店の奥から、威勢のよい声が聞こえてきた。
RAKが声をかける。
「相変わらず威勢がいいな。」

「あ、これはRAKさん。」

「今日はひとりなのか。」

「ええ、ひとりで%アタックやってたとこですわ。」
「彼女がいるとどうも緊張しちゃって…」

「どうだ、ちょっと昼メシでも」


隼鷹がそわそわし始めた。
「えーっと…あの…」

「金が無いってのか?」

「…(小声で)はい」

「はは…そんな心配はするな。今日はおごりじゃ。」

「いや…お恥ずかしい…」



近所の食堂に、2人は入った。
注文を取り、料理が来るまでの間、煙草に火をつける2人。

「またバクチですったのか」

「タハッ、RAKさんにかかればなんでもお見通しだなァ…」

「どうして真面目に働かん。」

「真面目になんて、働いてられないっすよ。」

「いくら残業したりしても給料は変わらないし、稼いでも稼いでも税金だ年金だで持って行かれるし」
「政治家どもは楽ばっかりしているのに、オレ達からは全部吸い取ろうって魂胆なんだからな」


「ははは、まぁ…そんなに愚痴をこぼすな」



やがて注文したものがテーブルに来た。

「さぁ、好きなだけ食え。足りなければまた注文しよう。」

「あぁ、すいません」


食事しながら…

「ところで、さっきの続きだが、今の仕事に不満があるならどうして転職しない?」

「確かに職変えして心機一転ってのもアリかもしれませんが。」

「これだというような仕事とか、上司とかに恵まれないんですよ。」

「ほう…」

「まぁ、オレが仕えてもいいと思うのはNALさんとかですな。」

「金離れはいいし、義には厚く礼に強いって噂ですからね。」

「まぁ、オレを“漢”と見込んで買ってくれる人なら命を売ってもいいな。」

「…」

「では、そのNALさんが命を買いたいといったらどうする。


「!!」
突然の申し出に、隼鷹は戸惑いを隠せずに飲んでいた水を吹き出してしまった。

「…RAKさん、冗談はいけませんや。」

「冗談では無い。オレが今日ココに来たのはそのためなのだ。」

「…こ、こんなオレを“漢”と見込んで買うというのですか。」

「そうだ。」

「…オレはあの方であれば、命を売ってもいいですぜ」

「よし、決まりだ。お前の命は買ったぞ。

「はい!」



RAKは真実を語り始めた。

「実はな、こういうことなのだ。」
「NALさんはこの程、東京メトロの新組織“メトロレンジャー”チームの司令として活躍する事になったのだ。」
「NALさんはな、オレ達を右腕として、すなわち隊員として、オレ達を使いたいらしいんだ。」


それを聞いた隼鷹は…

「!!」

「…そ、そんな大仕事に、オレを選んでくださったのですか!!」

「そうさ、隼鷹が根性のある男と見込んで、NALさんは買ってくれるのだ。

「おおおお、やっとオレを“漢”と見込んで買ってくれる人が現れやがったよ!!」


隼鷹は両手をテーブルにつけ頭を下げた。
「RAKさん!お願いです!ぜひ参加させてください!!」

「よし、じゃあ早速NALさんのところへ行こう!」




2人が訪れたのは、東京・上野にある東京メトロの本社ビルだった。

「ここが、メトロレンジャーの司令部となる場所だ」

「おぉ、ここですか!本社ビルの中にこんな一室が!」

「そうだ、オレは今後主に丸の内線を担当する。隼鷹、キミは有楽町線だ。」

「おお!住んでる街とは西武線や東武線で繋がっている…オレにぴったりじゃないですか!」

「さぁ…近くの店でNALさんが待っている、行こうか。」


本社の近くにある飲食店に、先にNALがいた。

「NALさ…いや、司令。戻りました。」

「お、RAKか。」

「彼が、隼鷹です。」

「…うむ!」

「私はメトロ司令官・NAL。さぁ、こちらへ。歓迎がてら一杯やろうか。」
既に席を用意していたらしく、2人は店の奥へ通される。

「へへ、さすが太っ腹ですね。何も言わずに酒ですって。来て良かった…(じーん)」

「お前は酒が出るとすぐそれだ…」


「さぁさぁ、遠慮は要らんぞ。好きなだけ飲んでくれ。」

「はは…元々遠慮するような男では無いですよ。」

「いやー、やっぱり来てよかった。」

すっかり上機嫌の隼鷹。
そこへ…ドスのきいた女性の声が。

「じ ゅ ん よ う さ ん ?」

隼鷹の背筋に(なぜか)緊張が走る。
「…ん?」

恐る恐る振りかえった先にいたのは…
「ここにいたのね、隼鷹さん?」

「あ、とわさん…どうしてここが。」





とわいせるなという女…
自称ネタ師の、鉄道関連ではまだ駆け出しレベル。
しかし、秘めたる能力と闘志は、誰にも負けない…。





「RAKさんとここに入っていくのを偶然見たんだけどね…」

「この前私の部屋に落としていったこのマッチ、…何? “キャバクラ・セリカ”って。」

隼鷹の血の気が一気に引いた。
「いや、違うの、それは貰い物で」

(ゴゴゴゴゴゴ…)
「私というものが あ り な が ら ・・・」
「甲州街道に、ぶん投げてやるわぁっ!!」


せるなの怒りが大爆発!隼鷹が逃げる体制に入った。
「うわわわわわわ、ち、違うんだって!!」

「問答無用!!待ちなさーい!!いや、待てっつってんだろーがコラァ!!」

逃げる隼鷹を、せるなが追いかけ回す。

その様子を見たNALはあっけにとられていた。
「な、なんだ?」

「司令、実は隼鷹の彼女と言うのは、彼女の事です(ややこしい)」

「交際しているという噂は聞いたが…そうだったのか。」

幸いにも、彼女も「鉄」です。それに、このことを話したとて他人にばらすような女性ではありません。」

「そうか…よし。」


隼鷹を捕まえて、おしおきをしているせるなにNALが近づいた。
「待て、音緒ちゃん…じゃなくて、とわいせるなさん。」

「あっ、NALさんじゃないですか。言ってくれればすぐ駆けつけましたのに…」

「少し話をしようか…こちらへ。」

「はい…」
隼鷹を離して、せるなはNALの後について席に座った。

「RAK、救急箱で隼鷹の手当てをしてやってくれ。」

「はい」

隼鷹は、往復ビンタと羽交い締めにされていた。それと、恐らくはグーで殴られた跡も…。
RAKが店から借りた救急箱で手当てをする。
「おまえは、まだ懲りないのか…」
「この前なんか、包丁持って追いかけまわされて、俺のところに駆込んだばかりじゃないか。」


「いや、その…セリカという単語を見るとつい体が無意識に…

「まぁ…喧嘩するほど仲がいいとは、言ったものだがな…(お似合いだな…このコンビは…)」



さて、テーブルについたせるな。NALの話に耳を傾けていた。
「実はな…」



「…というわけだったのさ。」

「…!!」
せるなの目の色が変わった。

「そこで、RAKと隼鷹の二人を招いたと言う訳だ。」

「…とわさん?」

せるなは、席を立ち、床に跪いた。
「お願いです!私も是非参加させてください!足手まといにはなりません!」

「何っ」

「私は別に金や名声が欲しいわけじゃないです。ただ、鉄道で悪事を働く人たちが許せないんです!

「我々と同じように熱き心を秘めたものが、ここにもおりましたな」

「うむ。」
「(…夢で見たのは大きな3つの星、彼女を加えれば3つの星になる…)」
「(…そして、戦闘における攻撃・防御・後方支援のバランスが取れる)」


NALのハラは決まった。
「よし、七星音緒改め、とわいせるな!キミも同士に加える!」

「おぉ!」

「あ、ありがとうございます!」

「よーし、みんな、同士の誓いだ!」

・・・本日も東京メトロ・東西線をご利用頂きまして有難うございます。
東陽町までの各駅と浦安、西船橋から終点東葉勝田台までは各駅に止まります。
なお、東京メトロでは悪の運行障害へ立ち向かう為、乗務員・駅係員がやむを得ず正義のヒーローへと変身する場合がございます。
あらかじめご了承下さい。


「マルノウチ・レッド!」

「ユウラク・イエロー!」

「トーザイ・ブルー!」

(3人で)「地下鉄戦隊 メトロ☆レンジャー参上!」

そしてこの時、水面下ではもうひとりの隊員との交渉を行われていた事を、メンバーは知らなかった・・・。
後に、同性であるブルー(せるな)にだけ教えられる事になるのだが…。


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