メトロ☆レンジャー

第10話 後編
「死闘のかなた…」


:RAK(マルノウチレッド)
:隼鷹(ユウラクイエロー)
グレー:怪人べるず
:とわいせるな(トーザイブルー)

(白:ナレーション他)


<前回までのあらすじ>
しおんを救うため、必死に戦うレンジャー隊員達!
残る最後の強敵は怪人べるずと戦うのは、リーダーRAK!
最終形態と化したべるずを、果たして倒すことができるのか?!そしてしおんの運命は…

「こ、これがべるずの最終形態…!!」

RAKの前に居る怪人べるずは、今までの姿ではなかった。
阿修羅像のような6本の腕、それぞれの腕が緑・オレンジ・青のラインが入っている。
さらにマスクの後頭部の側面にも、2つのマスク部分。

世にも恐ろしい姿となって目の前に立ちはだかるべるずを目の当たりにしたRAK。

「だが…俺はメトロレンジャーのリーダー!負けるわけにはいかぬ!行くぞ!!」
「かかって来い!」


残り10分!2人の意地をかけた最後の戦いが始まった!!


先に仕掛けたのはRAK。
「いくら腕が6本であっても、基本的な性能は変わらぬ!いくぞ!」

RAKが突撃し、攻撃を仕掛ける。

「おぉ!あれは乗車率200%パンチの体制だ!」

「…それは、どうかな?」

怪人べるずが、南北線の腕でRAKの手を受け止め
がら空きになった胴体に東西線の拳でRAKを攻撃、
そして、東豊線の張り手でRAKを突き飛ばした!

「うわっ!」

「こういう使い方も、出来るわけだ」



「…なんの!」

なおも立ち上がり、再度怪人べるずに向かっていくRAK。

「リーダー!あいつの腕相手じゃ、攻撃が通らないですよ!」

「ふっ、隼鷹のように、バカの一つ覚えだとは思わなかったぞ!」

「うるさい!」

「…それは違うぜ!」

「む!」

RAKは突然体制を低くし、スライディングで足元を狙う!
不意を突いて怪人べるずを転倒させた!

「ウォッ!!」

「そうか!腕は6本でも、支える足は2本だからだ!
 それに気がついたリーダーは、足元を狙ったんだ…」


「普通なら、あんな姿を見たら冷静さを失っちゃいそうなのに…さすがリーダーね!!」

転倒させた怪人べるずの背後からRAKが一気に襲い掛かる!
素早い関節技で、6本の腕を上手にからめて身動きを封じた!
「うぉぉぉっ…!!」


「すげぇ!あんなにあっさり決まるなんて!」

「リーダー!そのまま締め上げて、鍵を奪い取って!」

「さぁ!べるずよ!観念しろ!さもなくば腕がバラバラになるぞ!」


さらにRAKに力が入る!だが怪人べるずは…

「…これで、勝ったと思うのが甘いぞ…」

「ぬぉぉぉぉぉっ!ナンバー3000!」

「ん?!」

「見ろ!あいつの緑の腕の色が変わってきたぞ!」

「あれは…!!リーダー!逃げて!危ないわ!」


からめたの腕の一部…南北線の腕が徐々に変色していく!
同時に、昆虫のように曲がり始めた!

「なっ…?!!」

関節が増えて細かく曲がりだし、RAKの関節技を解きにかかった!
そして解いた瞬間に真上のRAKに掌低をお見舞いした。

「3000形は、連接構造なのを知らんのか」

「くっ…オレとしたことが!」

「リーダーがんばれー!!!」
隼鷹も声をからして必死に応援する。





「ん?」

「(何だろう、この紙切れ…?)」

せるなが戦いの場のそばに落ちていた紙切れに気がつき、拾ってみた。
RAKも隼鷹も、そして怪人べるずも誰も気がついていなかったようだ。

しかし、その紙切れを見てせるなが唖然とする!
「(こ、これって…まさか?!)」





「(あれだ…あの増えた腕を何とかしなくては…)」

「よし、行くぞ!」



「かかって来い!」

「うりゃぁーーーーっ!!」

大きく振りかぶったRAKの腕が何かの形に変化していく!



「な、なんだこれは?!」

「メトロ・ワイパー改!」

だが、ワイパー部分が刃になっていた!
そのまま怪人べるずの腕を切り落とすことに成功した!
不意を突かれたて腕を切り落とされた怪人べるずが、のたうち回る。

そしてワイパー部分の刃がボロボロになり、消えた…。


「できることなら使いたくは無かったが…背に腹は抱えられないからな!」


「リーダーにしちゃ珍しく、荒っぽい攻撃だな」

「でも、これで少しリーダーが有利になったわ!」

「そうだよ、要はアイツに勝てばいいんだ!」


動揺する怪人べるずに対し、攻撃の手を緩めない!
RAKの素早い電光石火の関節技で、残りの2本の腕を一気に砕いた!

「すげぇ!アームロックか?!」



「ウォォォッツ!!!」

2本の腕を失い、2本の腕は砕かれ、腕だけは元に戻った…ように見えた。



「よし、これで互角の勝負が出来るな!」

「いや、お前はまだ甘い。まだ腕を4本失っただけのこと」

「なんだって?」

そういうと、なんと怪人べるずは、砕かれた腕を自ら切り落とした!
切り落とされた腕が地面に落ちる。

「うわっ…!」

「最初から、6本あったわけではない。もともと、私には腕はお前たちと同じく、2本しかない」

「なに?!」

「残りの4本について、私は死亡した鉄道戦士から奪い取ることが出来るのだ。
 ドンが私に授けてくださった特技だ。」


落ちた腕が徐々に変形しだした、その形は…

「あ…これは3話でオレが戦った怪人テツスキーの腕だ!」

「見て…あれは…6話でドンに切り刻まれたテッポウダマの腕!」

「(何も2人して楽屋ネタに走らんでも^^;)」


「仕方ない、新たな腕を奪い取るとするか…」


気合を込めた怪人べるずに、再び腕が生え始めた!

「えっ…?あの腕の形…!!!」

緑色の服のような感じで、さきほどの腕よりも細い。まるで女性の腕のようだ。
一同が恐る恐る、しおんのカプセルの方向を見上げた。

「あーーーーーーーーーっ!!」

カプセルに入れられたしおんの両腕が消えている!
「ない!しおんちゃんの腕が消えている…!!」

「じゃあ、あれが…本物のしおんちゃんの腕なの?!」

「しおんの両腕は、頂いた!」

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

「貴様!…なんてことを!!」

「同じ仲間に攻撃を食らうがよい。これで仕上げだ!」

最後に現れた腕は、正体不明の赤い腕だった。
「(あれ…??あの模様どっかで見たんだけど、思い出せねぇなぁ…)」



「べるず面、東豊線ブルー「冷血」!!」

怪人べるずのマスクが、青の電車のものに切り替わった!

疲れを知らない腕を酷使し、怪人べるずが一気に攻撃を仕掛ける!
疲れから、RAKは防戦一方になってしまった。
しおんの拳の部分から血が滴り落ちるのが見えた。

「くそっ!あいつ、他人の腕だからって遠慮せずに使ってやがる!」

「どういうこと?!」

「本来、人間ってのは、無意識のうちに自分の身を守ろうとするから
 仮に戦士が攻撃する時も、自分の体にダメージが来ないように体が力を加減するんだよ。
 だが、今のアイツはまったくそれをしようとしないから、拳にダメージが跳ね返ってきてるんだ!」



「どうだ、仲間の腕に殴られる気分は!」
6本の腕から次々と繰り出されるパンチの嵐になすすべもないRAK。

「ぐっ…」

「これで、トドメだ!」


振りかぶった怪人べるず、だがその瞬間!
しおんの腕が、怪人べるずの顔面を殴って、東豊線マスクを砕いた!
そして怪人べるずの首を絞め始めた!



「ぐわああっ!」

「…!い、今だ!!」

RAKがすかさず反撃に出る!



「ど、どうして突然…」

「きっと、しおんちゃんが起こした奇跡よ!」

「な、なんだって…!
 しおんちゃん、キミはそんな姿になっても、俺達と一緒に戦ってくれるんだな!ううっ…」

感動の余り、思わず男泣きする隼鷹。


だが、徐々にしおんの力が弱くなってきたのか、首を絞めていた手が解けてしまった。
「ふふ…手間をかけたが、もう逃げられんぞ!」

「お前には十分すぎるダメージを与えておいたからな…」

満身創痍のRAK、さすがに受けたダメージが大きかった。
ボロボロで動くこともままならない。


「もう、逃がさんぞ!これで終わりにしてくれる!」

「べるず面、東西線オレンジ「怒り」!」

またもや怪人べるずのマスクがチェンジして、怒りの形相?に!
怪人べるずはRAKの頭をつかみ、上に放り投げてなにかの形にRAKの体をキャッチした!


「な、なんだあの技は?!」


RAKが逆さまになって怪人べるずの方の上に乗った状態で、両手両足、そして首が6本の腕に固められている!


「ま、まさかあの技でしおんちゃんを!」

「あ、あれでは絶対に逃げられないぞ!」


「これが私の必殺・ハイパーべるずスペシャルこと “スクラップクラッシュ” だ!
 鉄道戦士の最も残酷な死「廃車解体」をイメージした技なのだ!」


「お、恐ろしい技だわ…」

「リーダー!そんな技抜け出しちゃえ!!」

脱出しようとあがくRAK。だが動けば動くほど抜け出せない。
「だ…だめだ…6本の腕がガッチリ固めていて、動けない…!」

「そ、そんな!!」

「ふふっ…真の強者の前では、結束だの愛だのといったことは、無力なものだ…」




その時、せるなが突然叫びだした!
「もう止めて!あなた、本当は悪人なんか無いんでしょ!!」


「えっ?!」
突然の発言に困惑する隼鷹。


「きっと本当は、心の優しい鉄道戦士のはずよ!」

「う、う…うあっ…!」


一瞬、怪人べるずの脳裏に忌まわしい過去と戸惑いが…



「…お、おまえ!娘を何だと思っているんだ…!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「邪魔呼ばわりなど…許せん!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「…し、しまった、わ、私とした事がぁぁっ…!!」
「う、う…うわぁぁぁぁっ!!」



「な、なんだ?!あいつ、急に動揺しだしたぞ??!!」

「…!!」

しかし、それを振り払うように…

「ち、違う…!私は冷酷・冷血の…忠実なるドンあさみの真の部下なのだーー!!」

怪人べるずが大きく飛び上がり、スクラップクラッシュを仕掛けにかかった!!
RAK絶体絶命!!


「リーダー!!!!」

「いやぁぁーーーーーーーーーーーー!!」



RAKの意識が薄れていく中…
「(すまぬ、しおん…キミと共に運命を共にする瞬間が迫ってきたよ…)」

「(RAKよ!先代丸の内線赤の貴公子は、いかなる場面でも諦めなかったぞ)」

「(だ、誰だ…?!)」

「(ワシじゃ、RAK!)」

RAKの眼前には…
「(せ、先代!!…そ、そのお姿は…??両腕がないですよ?!)」

「(ワシの腕ならば、怪人のもとに…ホレ)」

「(えっ…?!)」
技をかけられながら横目でべるずの腕を見るRAK。

「(こ、これは…先代の腕だったのか!!)」





「ぐああっつ、な、なんだ…私の腕が突然…!」

先代の腕が、怪人べるずの首を絞めにかかった!
同時にしおんの腕も掴んだRAKの足を外した!

「今だ…今しかない…あの技を試す時が!!!」

「うぉぉぉっ!!レッドトレイン・ラスト・ランパワー!!」

最後に体勢を入れ替えたのは、RAKだった!
捨て身の覚悟で最後のパワーを振り絞り、怪人べるずの頭を自らの肩に抱え込んだ!
両足を掴んで横向きにしたUの字のようにべるずの体を折り曲げる!

それは山奥の特訓で身につけた、山の主を相手に無我夢中で仕掛けた技だった。

「こんな技、外してくれるわ!」

「なんの…!」
逃げにかかる怪人べるずの腕を、両足で挟みこんで動きを封じた!

「…!!!」
そしてそのまま、勢いよく地面に向かって落下!

「これで、終わりだ!!」

「ぬぉぉっ、動けん…!!」



「マルノウチ・グラビトーーーーン!」



そのまま落下し、轟音と共に技が完成した。
リーダーの大技が、怪人べるず相手に完璧に決まった!



「おぉ…あれが丸の内線の奥義なのか!」

「横から見た怪人べるずの体が、丸の内線の路線図のように折れ曲がってるわ…」

「あれが…さすがだ…リーダー…」


「ゴホッ!!」
べるずのマスクから、血の咳が!

そして、RAKの肩の上から、べるずが崩れ落ちる。


「決まったか…?!」
「(お願い…神様、リーダーに勝たせてあげてください!)」


「…」
2人の願いも空しく、べるずがフラフラと起き上がってくる!


「あ、あいつまだ起き上がってくるぞ!」
「そんな、今の技が効いてないの?!」


ダウンしたべるずが、ふらふらと迫ってくる!
身構えるRAK、だが…


「み…見事だ…私の…負けだ!」
そして、べるず足元から崩れ落ちる。
その瞬間、6本の腕のうち4本が消えた。


「終わった…!!」
遂に、べるずがダウンしたまま、動かなくなった…。

この瞬間、RAKの勝利が確定した。





隼鷹とせるなが横から飛び出し、勢いよくリーダーに抱きつく。

「すごい、すごいですリーダー!!かっこいい!」
「やった、やった、やったぞー!!やっぱり俺たちのリーダーは違うぜ!」

RAKの勝利にはしゃぐ2人。だが、RAKに喜びの表情は無かった…

「(恐ろしい相手だった…まともに戦っていれば、間違いなくオレはこいつに殺されていた…)」
倒れたべるずを見て、改めて自分が勝利したことを確認すると、少し落ち着いた。


抱き合って喜ぶせるなの視界の中に…

「…あぁ!!デジタルがもうそこまで!しおんちゃんが危ないです!!」

見ると、デジタルの光は、あと30秒ほどでしおんのカプセルまで到達してしまう!

「し、しまった!」
「余韻に浸ってる場合じゃない!鍵だ!鍵!」

しかし、肝心の鍵が…

「リーダー!鍵は?!」
「そ、それが…見つからん!」

倒れたべるずの服を探るが、どこにも鍵が無かった。

「そ、そんな!あと20秒切ったぞ!!」



RAKがべるずに迫る。
「おい!頼む!!鍵を出してくれ!
 おまえとは最後の最後まで、正々堂々と戦った!
 今は敵同士じゃなくて、戦友としてお願いしたい!頼む!!」



「あ…!!」


べるずのマスクの奥が一瞬輝き、マスクの目の部分から涙のようなものが中から零れ落ちる。
その流れに乗って、鍵が浮かび上がってきた!

「や、やったー!か、鍵が出てきたぞ!」
「ありがとよ!さぁ、とわさん急いで!キミでしか間に合わない!」
「は、はいっ!!」

隼鷹が鍵をせるなに託した。

「メトロ・快速ー!」
猛烈なダッシュでしおんが閉じ込められたカプセルにたどり着いた。

「おぉ!しおんちゃんの腕も元通りに戻っているぞ!」

「さぁ、しおんちゃん、今助けるよ!」
「急げー!もうそこまでデジタルの電流が迫ってるぞ!!」
「わかってますって!…よし、開いた!」

カプセルをこじ開け、今度ははりつけ状態のしおんの手足を解こうとする。
「な、なにこれ!ひとつひとつ開けなければいけないの?!」
しおんを拘束する部品が、右手・左手・胴体・足と完全に別になっていた。
しかし、一刻の猶予も無いので大急ぎで取り外しにかかる。


「な、なにこれ!!胴体の鍵が上手く回らない…!!」

「や、やべぇー!来たぞー!!」

デジタルが、3秒前まで迫っている!!

「ま、間に合わん!!」
「お願い…開いてー!!」










そして…デジタルが遂に目の前に!!!!


目を覆う隼鷹、呆然とするRAK。
「そ…そんな…ここまで来て…!」
「うわーーーーーーーーーーっ!」

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

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