メトロ☆レンジャー

第11話 前編
「改心」


:RAK(マルノウチレッド)
:隼鷹(ユウラクイエロー)
:とわいせるな(トーザイブルー)
:しおん(チヨダグリーン)
グレー:怪人べるず


(白:ナレーション他)


<前回までのあらすじ>
決戦で激突した、メトロレンジャーのリーダー・RAKと怪人べるず。
最後の最後で逆転技を繰り出し、RAKが勝利したのだった。
しかし、余韻に浸るまもなくしおんに危機が迫る…!!

「や、やべぇー!来たぞー!!」

高圧電流の流れるデジタルが、3秒前まで迫っている!!

「ま、間に合わん!!」
「お願い…開いてー!!」










そして…デジタルが遂に目の前に!!!!


目を覆う隼鷹、呆然とするRAK。
「そ…そんな…ここまで来て…!」
「うわーーーーーーーーーーっ!」

「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


















































だが、その瞬間!!

ガッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!


「あ…あれ??…はっ!!」

激しくガラスの割れる音が響き、なぜかここまで電流が流れてこない。

「何をしている!早く助け出せ!!」

誰かの声が響き、それを聞いたせるなが我に返り、ようやく胴体の部分にかけられた鍵を外した!
そしてしおんを抱きかかえてその場を離れた瞬間、カプセルに高圧電流が流れ出した!
大爆発と共に、爆風で2人が吹き飛ばされる!

「危ない!」

RAKと隼鷹が高くジャンプして、2人を受け止めて着地した。

「た、助かった〜〜…」

「2人とも、無事か!」

リーダーの声で、しおんが目覚める。

「リーダー、心配かけてごめんなさい。あたしは平気です。」

「私も大丈夫です。でも一体どうして…?」

「隼鷹、またおまえが機転を利かせて…?」

「いや、俺じゃないよ…?」

「まさか…!!」

よく見ると、カプセルの真横のデジタルにあったもの、それは刃つきのゴムタイヤ
そして、焦げたゴムの匂いが周囲を覆った。

「ああーーーーーーーーーーーーっ!!」

一同が見た先…それは…

「ハァハァ…こ…これでいい…」


ゴムタイヤを投げつけたのは、なんと怪人べるずだったのだ!

膝立ちのまま、投げた体制から硬直したようにその場にいた。
そして、そのまま倒れた…


4人が、べるずの元に駆け寄った。
RAKが倒れていたべるずの上半身を抱える。
マスクがひび割れ、素顔があらわになった…。その顔を見た一同が、驚きを隠せない。

「あっ…!」

見れば、RAKや隼鷹と年の変わらない、青年の姿だった。
自分たちを苦しめ続けた怪人の正体が、自分達と同じ世代の若者であることに、驚きと戸惑いのような感情が4人に起こった。


RAkが問いかける。
「…なぜ、俺達を助けた?!」

「…お…お前達との戦いに、満足したからさ…」

「何?!」

「…ワタシはこれまで、過去の戦いにおいて、常に自分の力を誇示し
 対戦相手を完膚なきまでに叩きのめしていた…それゆえに相手を
 なめた戦いしか、していなかった…」


「…」

「…だが、お前達と戦うようになり、少しずつ考えが変わっていった…
 特にしおんやRAKと戦った時、真剣勝負の醍醐味というものを
 初めて味わった…そんな気がしたのだ…」


「…べるずよ…お前は…」

「…しかし私は所詮、ゴムタイヤ同盟の一員。ドン・あさみ様の部下。
 どんな手を使っててでも、お前達を倒すしかなかった…
 だが、何度倒れても立ち上がってくるRAKの姿や、それを信じて
 決して加勢しなかった隼鷹、せるな…そして囚われの身でありながら
 共に戦っていたしおんの姿を見ていたら、急に自らの力を誇示していた
 自分がちっぽけなものに思えてきた…」


「…もう少し、お前達と早く出会っていれば…な…
 少しばかり…遅かったようだ…」


せるなが口を開く。
「ううん、そんなことないわ!あなたも立派な鉄道戦士よ!
 確かに時々卑怯な手段は使っていたけど、それは自分の意思じゃなかったんだし
 最後にはリーダーと真っ向勝負を挑んだじゃない!それこそ、あなたが
 鉄道戦士の誇りを失っていなかった証拠じゃないのかな」


「…こんな私でも、そうだと言えるのか」

黙って頷くせるなと、発言の真意がよくわからないものの同調する3人。

「…お前達…」

べるずの目には、再び涙が浮かんでいた。



やがて、服のポケットからべるずが何かを取り出した。

「…これを…」

見るとそれは、ドリンク剤のような瓶であった。

「これは?」

「…傷ついた体を癒す特効薬だ。
 あいにく2本しかないが、4人で半分ずつ飲めば闘う前の状態に戻れるだろう。」


「おまえ、こんなものを持っていて、どうして使わなかったんだ?!」

「…確かに、使えばお前達に勝つことが出来たかもしれない…
 だが、それは結果論だ。使わなかった私が負けただけのこと…」


「リーダーと、対等に戦いたかったから?」

「…何も言うな…」


半信半疑で、4人で分け合ってその薬を飲んでみた。
「す、すげぇ!まるで体が軽くなったみたいだ!」

「なんだ…?!体についた傷がどんどん消えていく…魔法のようだ!」

戦う前の、万全の状態に戻ることが出来た。


「…ありがとう…」

「いや…礼には及ばぬ…」


べるずが指を差したのは、しおんが閉じ込められていたカプセルだった。
電流によって爆破され、瓦礫の山と化し、焼けたゴムの匂いと埃が舞っている。

「…あの先に、ドンの間への扉がある。それが、ドンの元へ通じる唯一の道だ」

「な、なんと!」

「おまえ、そんなことを俺達に教えていいのか?!」

「…」

「一つだけ言っておく。ドンは私よりも比べ物にならないほど強い…。頑張れ…!」

意外な言葉に、困惑する一同。

「さぁ、何をしている。ここにいてはいけない…。私のことは構わず、早く行くがいい。」

「お…おお!」

「…べるずよ、君はこれからどうするんだ?」

「…少し、ここで一人で考えさせてくれ…」
それきり、べるずは座り込んで動かなくなった…。


「…わかった!…ありがとう!  さぁ、みんな行こう!」

リーダーが先頭になり、先ほどの爆破されたカプセルの奥にあった扉をこじ開ける。
中は、ひたすら長い地底への階段になっていた。





隼鷹、しおんがリーダーの後に続く。だが…
















せるなだけ、まだその場に残っていた。

「どうしたせるな。怖いのか?」

「ううん。これ…」


せるなの手にあったものは、RAKとべるずが戦っている最中に拾い上げた紙切れ…。
それは…素顔のべるずと、幼少の女の子が映っている写真だった!
よく見るとそれは、女の子の横の部分に、切り離したような跡があった。

その背後には、かつての怪人べるずのマスクによく似た、鉄道戦士のマスク!


「…お前は、それを見たのか」

「えぇ…悪いとは思いながらも」

「…立派な鉄道戦士、か…確かに、昔はそうだったよ…」

「やっぱり…! 何か違うものを感じたの…
 あなたは、何かを背負っていた感じがして…」


「…鋭いな…さすが、隼鷹の浮気癖をいち早く見抜くだけある」

「(苦笑)…ねぇ、聞かせてくれない?あなたのこととか、その子のこと…」

「…」

「あ…嫌なら別に…!」

「…いいだろう。」

「えっ…」

「昔、お前達メトロレンジャーのように、札幌にも地下鉄戦士がいた…
 私は…かつてその一員だったのだ」


「!!」

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