メトロ☆レンジャー

第12話 その3
「巨大要塞」


:RAK(マルノウチレッド)
:隼鷹(ユウラクイエロー)
:とわいせるな(トーザイブルー)
:しおん(チヨダグリーン)

薄グレー:ドン・あさみ

:NAL
グレー怪人べるず

(白:ナレーション他)


<前回までのあらすじ>
女性陣の活躍で、ドンの左袖を斬り落としたメトロレンジャー。

意気揚々となるリーダー・隼鷹・しおんの3人、不安が隠せないせるな…

ついに隠された左腕があらわになったドンは、錫杖をその場に置いた。

「?! 素手で来る気か!」

「お前たちを少し、ナメすぎていたようだな」

両手の拳を合わせ、戦闘体制に静かに入るドン。
そしてウォーミングアップをするかのごとく腕を振り回す。

全身からにじみ出る迫力に、今にも圧倒されそうだった。

「Tokyo Heart 東京メトロ、か…」

「…?!」

ドンは何かをつぶやき始める。

「ならば…そのハートとやら…蜂の巣どころか、原形をとどめぬようにしてくれるわ!」

赤く光る目を見開いたドンが拳を振りかざす!

「アースクェイク・クラッシュ!」

ドンは左の拳を、思い切り地面に向かって撃ちつけた!
その瞬間、巨大な地震が発生する!

「!!」

「うわーっ!!」
「きゃーっ!!」


一瞬、巨大な揺れで身動きが取れなくなったレンジャー達に、ドンが急接近して襲い掛かる!

「残念だったな!まずはお前だ!」

身動きのとれなくなったRAKの目の前まで迫ったドンが、左ストレートをRAKの顔面めがけて撃ち放つ!

ガッシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

大きな破壊音とともに避けることができずにまともに食らったRAKは、遠くに弾き飛ばされた!
その衝撃で、マスクが真っ二つに割れてしまった!

「リーダー!!」

「ぐっ…マ…マスクがなかったら…死んでたぜ…」

かろうじて急所だけは外したが、かなりのダメージを負ってしまった。
RAKはその場にうずくまる…



「よーし、RAKをとりあえず足止めしたから、次は貴様らだな」

「な、なにを…!」

隼鷹としおんが身構える。

「よーし、お前にはこういう技を用意してやるぜ」

ドンはしおんに目線を向ける。

「何をっ!やるかっ」

ドンは身動きをとらず、その場でニヤリと笑いながらしおんに目線を向ける。

だがその瞬間、隼鷹があることに気がついた。

「(ん?あれは影… ま、まさか?!)」

ドンの足元の影が、しおんに向かって伸びている!


「いけないしおんちゃん!足を引くんだ!」

「えっ?」

隼鷹が叫ぶのも間に合わず、影はしおんの体の下にまで到達した。
間髪入れず、下から黒い物体がしおんの体にまとわりついた!


「キャーーーーーーーッ?!な、なに?!」

「…気が付くのが遅かったようだな!」

黒い物体は、ドンの髪だった!

そして、一瞬にして絡みついた髪に、しおんの体が一気に隼鷹から引き離される!

「そうはいくか!」

離れるしおんの体を追う隼鷹に、今度は別の髪が襲い掛かる!
髪の先端が鋭利に尖り、隼鷹の体につきささる!

「ぐわっ!!」

寸での所で急所を外し後退して、なんとか串刺しだけは逃れることができた。

「…な、なんだ?!あの髪は?!まるで触手だ…!」

「ふふ、あたしの力を開放すれば、こんな芸当も可能になるのさ!」

ドンは髪に縛られ自由が利かないしおんの体を、勢いよく何度も地面にたたきつける!

「ああっ!!」

「お前にはさっき、不意打ちを食らったからな!こんなもんじゃ、終わらせねーぜ」

再びしおんの体が、今度は頭から地面にたたきつけられる!

「うぐっ!」

「や、やめやがれー!!」

隼鷹が飛びかかるも、再び伸びた髪が隼鷹をはねのける。
数回しおんを地面に叩きつけて、ぐったりしたところで動きが止まった。

「く、くそっ、あの髪が邪魔でたどりつけない…!」

「ふふ、隼鷹 おまえにはもっと耐え難い苦痛を見せてやろう ホレ」

「何だと?!…あーっ!!」

ドンの髪に隠れた中から、同じように拘束されていたせるなの姿が現れた!

「お前、かつてはエロゲの好きなやつとつるんでおったのぅ」

「むっ、青りんごの話か!よく知ってやがる」

「同じことを、ここでせるなにしてやったら、どうなるかな〜?」

「しょ、触手ってことは…なっ、何ということをー!
 (オレですら縛りなんかやったことないのに!)」


「もう遅い!お前には恋人が凌辱される瞬間を見せつけてから、ゆっくりいたぶって殺してやる!まずはコイツからだ!」

ドンの髪が容赦なくせるなの服を切り刻みにかかる!

「おわー!やめろ〜!!」

「本音を言え!本当は少し見たいんだろう」

「ち、違う!オレは断じてそんな変態チックなことはしな…い!」

「まぁ、そこでじっくり指をくわえて見ているがいい
 あぁ、ティッシュはちゃんと使えよ?」


首を締めあげられるせるなに意識はなかった。

「ヘアー・カッター!!」

「うわっ!」

強烈な風が吹き荒れ、伸びた髪がせるなの服を切り刻む!
その布切れが隼鷹にも飛んでくる…

半泣きの状態で、

「と、とわさーーーーーーーん!!」

そして、せるなの体があらわになろうとしたその瞬間…













































「?!な、なんだ?!」

せるなの体から強烈な光が発せられ、その姿が見えなくなった!
代わりに現れたのは、オレンジ色の光に包まれた…まりむ!

「おおっ!こんなところで!なんていいトコ取りなんだ!」

「隼鷹さん、感心してないで手伝ってよね!」

「お、おう!!」

「いっくぞーーー!日大ラッシュ・スパイラル!!」

一瞬ゆるんだ髪を一気に振り払い、自らの体を回転させて動けるようになった!
間髪入れず次の態勢に入るまりむ。

「東葉快速・ラピッドトレイン!」

槍をかざし、矢のように高速でドンに突っ込む!

「そうはいくか!あたしの髪はまだいくらでもある!」

ドンは髪を伸ばして、まりむに向けて動きを止めにかかるが…

「編成・分割!」

「?!」

まりむが槍を手放し、まりむはドンを飛び越えてしまった!

槍だけがドンに向かってくる!

「チッ!」

まりむの行動に気を取られ、一瞬の遅れから槍を落とすことができなかった。
ドンは槍をかわすも、刃先がドンの頬をかすった。

「くっ!こしゃくな… ・・・!?」

「くらえ!」

その瞬間、真上のまりむがドンに向かって膝から急降下する!
ドンはまともに喰らってしまい、痛みが脳にダイレクトに伝わってくる。

「うがぁっ…!!」

その瞬間、伸びていた髪が一気に縮み、しおんも解放された。

「やっぱりね!髪をつかさどる部分、根元を攻撃すれば何とかなると読んでいたけど」

高い場所にいたしおんが落下し、隼鷹がそれを受け止める!

「しおんちゃん大丈夫か!ひでぇ傷だ…!」

「こ、これしきの攻撃、大丈夫です…それより、せるなさんは」

「大丈夫だ!まりむがまた助けに出てきてくれたんだ」

「槍よ!戻れ!」

ロッドスピアがまりむの手まで戻り、再びドンと対峙する。

「この死にぞこないが!調子のいい所で現れおって!」

「そういう性分なんでね」

「調子のいい奴め!こてんぱんにしてやるわっ!」

「あら、錫杖はいいの〜?」

まりむの挑発に、ドンの怒りが爆発する。

「ぬかせ!」

ドンは怒りの形相でまりむに突撃してくる。

「ふっ、かかったわね!」

まりむが素早く横方向へかわし、カウンターを試みるが…

「かかったのは、お前の方だ!」

ドンは方向を転換し、コートのスカート部分の裾を振り回してまりむを追い払った!

「うわっ、危ねーっ!」

不意をつかれたまりむはかろうじて回避、思わず舌を出す。

「うーん、うまくいかなかったか なんでわかった?」

「あの攻撃は明らかに手加減をしていた…
 そこで私は悟ったのだ
 この一連の攻撃は、あたしを怒らせるものだということがな」



「攻撃を受けながらその先を読むなんて…なんという冷静な判断力!」

外から見守る隼鷹が、その能力に感嘆する。


まりむは槍の先から、人工の太陽を作りだした!

「発動!ライジング・サン! 灼熱地獄を味わわせてやるわ!」

猛烈な熱風と夕凪がドンの体に不快感をもたらす。

「全車非冷房のあんた達には、この暑さは応えるっしょ!」

「甘い!あたしがどこから来たと思っているのだ!」

ドンもすかさず反撃する。

「ハイパー・ヘル・ブリザード!」

今度はドンが、せるなを氷漬けにした技を発動させた!
自らの体から強烈な猛吹雪を発生させる!

ユリ・カルマの時は封じることができた風雪も
力を解放させたドンの威力はけた違いだった。
やがてまりむの発生させたライジング・サンの威力が弱くなる。

ドンは雪を氷に変え、鋭利に尖った氷塊がまりむに襲いかかる!

「お前は雪漬けにはせぬ!粉々にしてくれる!」

「ダイヤモンド・ダスト!」

「そうはいくか!シェルター・シールド!」

まりむはシェルターのバリアを張り、ドンの攻撃を上手く避けた。

「なに!貴様がシェルターを使っただと!」

「東葉線にはね、一部区間にシェルターがあるのよ!今度はこっちの番!」

「いでよ!沖縄・台風地獄!

まりむの槍の先端から雨雲が発生し、嵐を巻き起こす!

「シェルター・シールド!」

ドンはシェルターのバリアを張り、雨風を防ぐ。

「やっぱり、使ってきたわね!…??」

ドンは、シェルターを盾に猛然とまりむに向かって、大風の中を突進してくる!

「げっ!と、突破して来やがった!」

「覚えておけ!私のシェルターには、窓があることをな!」

ドンはそのまままりむの体を捕えて急上昇し、折り返しでそのまま地面に向かって垂直に急降下する!

「しまったぁっ!窓から確認しながら突っ込んできていたなんて!」

「そういうことよ!くたばれ!地獄のエレベータ!」

「うぐっ!」

まりむの体を背中からそのまま地面にたたきつけた!

「せ…背中の感覚が無い!…」

さらにドンは、ハイヒールで倒れているまりむの頭を激しく踏みつける!

「終電間際の、乗り換えダッシュ!」

この攻撃で、遂にまりむのマスクが破壊された!!
美しい髪が露わになっても、ドンの容赦ない攻撃が続く!

まりむは体をねじって、ストッピング攻撃から逃れて態勢を立て直す。

「ホンッッッッッッッッッッッットに、鬼畜ねアンタ!!あいたたたたたた…」

頭にダメージを受け、流血するまりむ。

「ふふ、さっきの強がりはどうした?その程度か?」

「なっ、なにを!」

まりむは再びドンに向かって突進する。ドンも応戦する。

ドンは迎え撃つと思いきや、姿勢を低くしてスライディングの態勢に入った!

「スライディング・カッター!」

足をすくわれただけではなく、通過の瞬間にスカートの裾で斬りつけられた!
傷口が深く、両足からの出血が止まらない!

「うっ…足が…いうことをきかない…」

この隙にドンは背後からまりむに乗っかり、体を締め上げる!
まりむは両腕と首をドンの両腕におさえられ、大腿部をドンの足に締めあげられ、かろうじて立っている状態だった。

「このまま貴様を、バラバラにしてくれる!」

「う、うわーっ!!(こ、こいつ…錫杖が無い方が…はるかに強い!!)」

しおんを守る隼鷹も、遠くからまりむに向かって叫ぶ。
「まりむ、なんとか振りほどくんだー!」

「よ、よーし…!リフト・アップ!ぬああああっ!!」

態勢を持ち直し、今度は逆にドンの後ろにたたきつけようとするが…

「そうはいくか!身の程を知れ!」

完全に決められているまりむの力では、ドンを振りほどくことができなかった。
もがくまりむに手立てがなかった。

「ああうっ!!」
「これで、とどめだ!」

ドンは締めあげた手の向きを変えて、まりむの首を締めにかかる!

「…!!…う…がっ…!!」

「このまま酸素不足で死んでしまえ!後でゆっくりスクラップにしてやる!」

「…!!」

失いかけたまりむの意識に変わって、今度はせるなの意識が強くなってきた!
「(も、もう…ガマンできない!)」

「ン?!」

ドンが不思議な感触を覚えたその瞬間、つかんでいたはずのまりむの体がまばゆい青い光に包まれる!

「うっ…!なんだこれは!目が…」

一瞬目を閉じたドンの力が緩み、まりむの体が離れた!

「チェンジ!」

まりむは、元のせるなに戻った!
一瞬のすきをついて、ドンの固め技から逃れることに成功した!

「今度は、私が彼女を守る番ね!えーーーーぃっ動けっ!!」

まりむが手放していたロッドスピアが、そのままの形でドンに向かって猛スピードで飛んでくる!

「くっ!」

寸出の所でドンがかわし、そのままロッドスピアは元の形に戻って、せるなの手に収まった。

「さぁ、今度は私の番よ!」

「ちっ、惜しい所で邪魔をしよる…まぁいい、お前もまとめて始末してやる」



3人に対峙するドンの次なる手だては…



「ナンバー・ファイアボール!」

ドンのかざした両手から、燃え盛る炎の玉が無数に現れる!

「で、出たわねっ!ドンの秘密兵器が…」

「…!」
せるなにとっては苦い思い出(第6話中編)を思い起こさせる。
それを瞬時に汲んだ隼鷹が声をかける。

「大丈夫!急所さえ外せば、なんとかなるって」

「ふっ…甘いのぅ」

「なんですって!」

「いかにお前たちのバトルスーツが不燃材をつかっていたとしても、このファイアボールの前には無力!」

「なんだとっ」

「なにしろ、インパクトの瞬間は、車体を焼き切るガスバーナー並みの威力があるからな」

「な、なんですってー?!じゃあ、あの時のは…」

一同の顔が青ざめる。

「あんなもの、私の10分の1の力も出しちゃいないわ!
 あたしが左手の力を開放して本気を出せば
 貴様らを消し炭にすることなど、造作もないということだ!」


「くっ、そんな脅しにはのらねーぜ!」

ドンは振りかぶる。

「その強がり、どこまで続くかな…?くらえ!」

ドンの頭上のファイアボールが、隼鷹めがけて高速で飛んでくる!その数は12発!

「うわっ!前回(第6話中編)よりも多いじゃねーか!!」

持ち前の俊敏性を生かし、かろうじてかわし続ける。

「うわっ!」「ひぃっ!」

「ホレ、何も全部が同じ速度とは限らんぞ!オフピーク・コントロール!」

飛んでくる残りのファイアボールが、時間差を持って飛んでくる!

「ゲッ、タイミングが!(このままじゃ当たっちまう!)…こうなったら…」

隼鷹が手に念を込める。

「モーター・サイクリング! そらよーーーーっ!!」

ゴムタイヤを作り上げ、それをファイアボールの多い方へ投げ飛ばす!
タイヤでファイアボールを相殺させて危機を回避した。辺りに焼けたゴムの匂いが漂う。

「なにっ!まさか貴様がその技を…」

「西武鉄道のレオライナーをなめんじゃねーぞ!」

「ふっ、じゃあ今度はどうかな?」

ドンは再びファイアボールを隼鷹めがけて飛ばし始めた!

「ナンバー・ファイアボール!」

今度は、18発のファイアボールが飛んでくる!

「6発増えただけじゃねーか。今度だって、かわしき…??!」

途中から、ファイアボールが3つに分裂を始めた!総計54発!

「覚えておけ、18という数字がいくつあるか!」

しおんは胸元にしまった時刻表を取り出して調べてみた。

「北18条…南郷18丁目…西18丁目…確かに、3つあるわ!」

「感心してる場合じゃないよ しおんちゃん!!(汗」

「あれじゃ、全部かわせない!!」

そうこうしているうちに隼鷹が完全にファイアボールに囲まれる!

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーっ!あちちちちちっ!!」

「隼鷹さーん!!!」

燃え盛る火の中から、隼鷹が飛び出してきた!
「尻に火がついた」という状態を体で再現したような構図だった。

「食らう前に、隠し持っていた消火液を体にかけてたから、助かった〜!」

隼鷹は消火器の空を投げ捨てた。

「ドラえもんのポケットみたいなヤローだな…そんなものまで隠し持っておるとは」

「隼鷹さん、傷の手当を…!」

せるながロッドを使って回復の術を試みる。

「よーし!じゃあ、その間は私が行きます!」

今度はしおんが、ドンの前に対峙する。

「さぁー、ドン・あさみ!今度は私が相手よっ!」

「こしゃくな小娘が…すぐ、楽にしてやる!」

再びドンが両手をかざし、大量のファイアボールを発生させる!

「今度は、24発!覚悟しな!」

ファイアボールがいっせいに、しおん目がけて襲い掛かる!

「とおっ!!」

1つ目のファイアボールをかわし、次の2つ同時に飛んできたファイアボールをジャンプでかわして相殺させた!
間髪入れず襲い掛かるファイアボールを、今度は背中のウィングで風を発生させて、わずかに起動を変えさせて自爆させる。

「うまい、うまいぞ!しおんちゃん!」

ファイアボールをかわしながらも、確実にドンめがけて近づこうと試みる。

「覚悟!ドン!」

「甘いわ!」

しおんは直接攻撃を試みるも、瞬時にドンがかわして、カウンター攻撃!
態勢を崩されそうになるも、かろうじてダメージは最小限に食い止めた。

「ううっ、わずかに胸をかすっただけなのに、風穴があいたような感覚が…」

「これのことか?」

「え?あれ?!あ…キャーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

ドンの手には…なんと、しおんのブラジャーが!
両手で胸を抑えるしおんは、赤面してその場にしゃがみこむ。

「ほー、ピンクか。」

「うおっ!!アイツいつの間に!」

「(ムカッ)」

叫びつつも凝視する隼鷹の頬を、せるなが抓る。

「ひ、卑怯な!」

「ふふ、ブラをはぎとられるくらいじゃこたえないか」

「そ、そんな外伝(Asami-sama Books 参照)のネタをここでやるなーっ!」

「だったら、今度はパンツでもはぎとってやるぜ」

「させるかぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

しおんは再び立ち上がり、ドンに向かって攻め始めた!
しかし、今度はファイアボールが壁のように立ちふさがる!

「うわあっ!!」

しおんの体はファイアボールではじき返された。かろうじてダメージは少なくて済んだ。
ファイアボールの軌道は、ドンを守るかのように、囲むようにループしていた。

「ファイアボールは、何も攻撃だけじゃねぇ こんな芸当も可能なのさ!」

「だ、だめだ…あの高速で動きまわるファイアボールがある限り、ドンに近づけないわ…」



隼鷹の手当をするせるなが、しおんの戦況を見つめる。
遠くから、そのファイアボールの動きを観察していたのだった。
そして何か、疑問が解けたような感じがした。

「(やっぱり…私の思った通りだわ!)」



「今度こそ!」

しおんが再び攻撃を仕掛けるのを、せるなが止めに入る。

「待って!私に考えがあるの」

呼び止めたせるなに、しおんと、隼鷹が寄って…

「(えっ、本当?!)」

「(なにか打開策が?)」

「(ファイアボールをとにかく遠くでかわすのよ!それだけ!)」

「(考えてみて、加速は確かに私達より速い。でも最大速度は…)」

「(!)」

「(あのファイアボール、加速は確かに速いけど…)」
「(…なるほど!)」
「(…そういうことか!)」
せるなが2人に耳打ちする。


「何をする気だ?!」


3人はそれぞれ、乗り入れ各社の種別に切り替える!


「快速!東葉勝田台!」


「急行!飯能!」


「多摩急行!唐木田!出発ー!」

3人は別々の方向へジャンプし、三角飛びを繰り返しながら、100km/hを超える速度で動きまわる!

「そうか、最高速なら俺達の方が上だった!」

「あの時の特訓、ここで生きたね!」

「今なら、確実に見える!」

最も早いせるなに至っては、ファイアボールを追い抜いてしまうほどのスピード!

「ファイアボールの発生源の、根源になっている札幌の地下鉄は“最高速70km/h”というのが、あだになったようね!」

3人がかりで撹乱している為、炎の玉の狙いが定まらない。

「クソッ!これでは狙いが定まらん!!」

ファイアボールを当てることに気を取られていたドンがやがて3人の動きを見失う。
次の瞬間、3人はファイアボールを影代わりに、3方向からドンめがけて突進してきた。

隼鷹は足から、しおんは拳から、せるなはロッドを振りかぶって、ドンに一斉攻撃を仕掛けた!

「うぐっ!!」

隼鷹のキックはドンの後頭部に、しおんの拳はドンのわき腹にクリーンヒット!
そしてせるなはロッドから放たれる攻撃魔法を、ドンの正面から命中させた!
そしてすぐに反撃をかわすために離脱する3人。

「やったぜ!奇襲が上手く行ったぜ!」

「そ、そうは問屋がおろさぬのだ!」

「?!」

「きゃあーーーーーーーーーーーーっ!」

「!」

しかし、予想外のファイアボールがしおんの背中に命中!
あまりの奇襲に避けることができず、背中のウィングパーツが焼かれてしまった。

「しおんちゃん!大丈夫か!」

「ううっ、せ、背中が…っ」

背中にダメージを追い、傷口からは黒煙が立ち上り、その場にうずくまるしおん。

「だから、同じ数字の場合は分裂するのだ もう忘れたか」

分裂したのは、13のファイアボールの塊だった。

「13というと…南郷13丁目と…北13条東!マイナーすぎて忘れさせるとは卑怯な!」

「お前たちが無知なだけだ!」

「今度こそ!」

隼鷹が立ち上がる!

「えーい、どけ!まずは2人一組の危険分子(=せるな)の始末が先だ!」

今度はせるな目がけてファイアーボールを放つ!今度は28発!
隼鷹はひるむことなく、前に出た。

「いでよ、スタンション・ポール!」

懐から取り出した握り棒の部品が伸びて、バットほどの長さになった。
そして、野球のバッターのように大きく振りかぶる!

そして、飛んできたファイアボールに合わせて、スイング!

「ふっ、それではじき返そうってのか。当たった瞬間に溶けてしまうわ!」

「オレの狙いは、そこじゃないぜ!そりゃーーーーーっ!懐かしのオバQ(大洋・田代)!」

隼鷹の狙いは、ホームラン狙いのスイングで風圧を起こすことだった!
空振りの風圧ではじき返したファイアボールがライナーになって、幾つものファイアボールを相殺した!

「うまーい!」

「野球の基本は、ピッチャー返しなんだけどな!」

「おのれ、また邪魔をしおって!…だが、まだ残っておるわ!」

「ファイアボール・ホーミング!」

先ほどまで直線的に向かってきたファイアボールの残りが、起動を曲げて、追いかけるように襲い掛かる!
せるなは寸での所でかわすのが精いっぱいだった。

「あ、あぶねぇ!!き、起動が変わってきたぞ!気をつけろ」

「なんの!かわしてみせるわ!」

「そう言っていられるのも、今のうちだ!」

ドンは次々とファイアボールを発生させる!
複数あったファイアボールの起動が変わり始めた。
やがてそのファイアボールが、1か所に向かって集まり始めた・・・


「こうなったら誰でもいい、こいつから血祭りだ!」


ドンの標的は、倒れているしおんに向けられた!

「し、しまった!オレたちは、囮だったのか!」

「地獄の殺人ラッシュアワー!」

轟音とともに、しおん目がけてすべてのファイアボールが襲い掛かる!
その数、713181118281218243413

「しおんちゃん、逃げろーーーーっ!!」

しかし、あまりのスピードにかわすことができない!

「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

轟音とともに、しおんの体に向かってファイアボールが集中砲火!
そして、大爆発が起こった!!!


「ほう、消し炭にはならなかったか」

「う、ううっ…」

焼け跡から、しおんはフラフラになりながらも立ちあがってきた。
しおんの服は焼け焦げ、マスクはボロボロになってしまった。
美しい髪も、ボサボサになってしまった。
あらわになった肌に無数の火傷が痛々しい。

「あのしおんちゃんが、こんな無残な姿になるなんて…!」

「し、しおんさーーーーーーーーーーーーーん!!!」


意識を失いかけているしおんには2人の声がかすかに聞こえる。
「こ…この戦闘服じゃなかったら…間違いなく…黒こげで即死だった…わ…」

しかし、立ち続けることもできないほどダメージを受け、その場に倒れ込んだ。
目には悔しさから涙がこぼれる。

「みんな…ま、また…ゴメン…」

倒れ込んだしおん…

「し、しおんさん…!」





「て、てめぇ…しおんちゃんみたいないいやつを、よくも!」

「絶対に、許さないわ!」

怒りに拳が震える隼鷹、ロッドを持つ手に力がみなぎるせるな。

2人に対峙したドンは両手をかざし、地面に置いたままの錫杖を頭上に浮かばせた。
そして錫杖を念力で回し始めた!

身構える2人…

「あいつ、何をする気…??」

「これがあたしの、必殺の奥儀の一つ

「なんだと?!…あぁっ!!」

ドンの両手から、何かが錫杖に吸い込まれ、錫杖からさらに上空に何かが発生している!

「あ、あれは…電磁力のモーターをイメージしているんだ!」

「力を電気に変えて…?!す、すごい出力…あ、あれは…!!」

上空に見えるどす黒い煙のような物体、それはまぎれもなく、雷雲だった!


ピカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!


轟く雷鳴が、2人の耳に劈く。

「うわーっ!!」

「キャーッ!!」

その瞬間、雷が両手をかざしたドンを直撃した!!

雷を受けたドンがさらに力をこめて、巨大な球体を作り上げた!
離れていてもしびれが迫ってくる。


「サンダー・ボール!消し炭にしてやるぜ…」

先ほどのファイアボールとは、比べ物にならない程巨大な球体であった。
ドンはサウスポーのように振りかぶり…

「死ねーっ!!」

「くっ…今度だってかわしてみせ…???」

「?!」

投げたと思いきや、2人とはまったく違う方向に向かって投げ飛ばす。


その方向は…


サンダーボールが、倒れているRAKに目がけて飛んで行く!
轟音を立ててサンダーボールが放電しつつ、倒れて動けないRAKに迫る。

「し、しまった!!あいつの狙いは、最初から私達ではなかったのね…!」

「まずは頭を仕留めるのが先だ!」

「リーダー!逃げてー!!!」

「…!!!」

しかし、体が言うことを聞かず、RAKはその場から逃げることが出来ない。



「む…、無念…」



サンダーボールが、無情にも爆発し、辺り一面が破壊される!
煙で何も見えなくなってしまった。



「リーダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

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