メトロ☆レンジャー

第12話 その4
「孤独の戦士」


:RAK(マルノウチレッド)
:隼鷹(ユウラクイエロー)
:とわいせるな(トーザイブルー)
:しおん(チヨダグリーン)

薄グレー:ドン・あさみ

:NAL
グレー怪人べるず

(白:ナレーション他)


<前回までのあらすじ>
力を解放したドンの圧倒的な力に、次々と倒れて行くレンジャー達。

ドンの奥儀「サンダー・ボール」がついにRAKをとらえて…

粉微塵に破壊された一帯を、うすら笑みを浮かべながら眺めるドン。
呆然と立ち尽くす、隼鷹とせるな。


だが、この立場はすぐに逆転することになることは、誰もわからなかった。


ドンは悠然と破壊された爆心地へ歩み寄る。
「ふふ、コレクションにするつもりが、勢いあまってスクラップにしてしまったわい」

「おお、これはひどい…ふふふ」

「どれ、残骸でもコレクションに加えるとすr」

その瞬間、地面からブレードの刃が伸びて、ドンの肩口に突き刺さった!
すぐさま身を引くドンが見たものは…。



残骸の山の中から、赤い影!


「な…?!き、貴様!」


破壊されつくした一帯の中から現れたのは、RAKの姿だった。



「リーダー!」
隼鷹が駆け寄った。

「あのすごい攻撃、どうやって防いだんすか!」

「…」

黙るRAKの手には、オレンジ色の破片のような部品があった。

「えっ、こ、これって…まさか!!!」



そこへ、無表情のせるなが歩み寄った。
「そう、その、まさかなの…」

「とわさん?!」





「な、なぜだ?なぜあたしのサンダーボールを食らって生きていられる?!」
ドンに初めて動揺が走る。

「ドン…私達の結束の力をもってすれば、たやすいことなの」

「何を!」

「そう、これだって、尊い仲間の…犠牲があったからこそ…」

せるなの視線の先には、地面に散らばったオレンジ色の破片…







せるなの心の奥底で、人格同士が言い争い状態だった。

「せるなっ!行かせて!」

「ダメよまりむ!今度こそ本当に死んじゃうよ!!」

「何をいまさらキレイごとを言ってるの!リーダーが死んでもいいの?!」

「犠牲は私だけにして、あなた達はドンを倒すことに邁進してちょうだい!」

「わ…わかったわ!許して…!」


「分離!」


ついにせるなの肉体と、まりむの魂が分離した!

「一度だけ、一瞬だけ実体化すれば、リーダーを助けられる…」

「今まで、ありがとう… …さようなら!せるな!」


目に涙を浮かべつつも、闘志に燃えるまりむの魂が、勢いよく飛び立った…


「あああああっ、間に合ってぇぇぇぇぇぇっ!!リーダーは私が守るっ!」


そして、RAKの目の前に立ち塞がった瞬間に、実体化した。

「シェルター・バリア!」

バリアは自分にかけず、後ろにいるRAKにかけた!

「!! き、君は…!」

かすかに後ろを向いたまりむの顔には悲壮感はなく、笑みが。

「頑張って・・・私の分まで・・・メトロレンジャーに・・・栄光あれ!」

その瞬間、まりむの体を轟音とともにサンダーボールが直撃した…

窓のないまりむのシェルターバリアが、粉粉になる様子を覆い隠した格好になった。

渾身の力を込めたシェルターバリアも衝撃に耐えきれず、ひびが入り始めた。

「…はっ!」

直観的に危機を感じたRAKはすぐさま地面に穴をあけて身を伏せ、助かったのだった。







「一度死んだ者が、一瞬だけ実体化してRAKを助けただと…?!」

「おまえみたいな残虐なやつには、まりむの気持ちなんかわかんねぇよ!」

「ぬかせ!死にぞこないを助けたところで、お前達の劣勢は変えられぬわ!」

隼鷹が叫び、呼応するようにRAKも立ち上がる。

「誰が、死にぞこないだと!」

「おおっ、リーダー!」

「まりむに守ってもらったこの命、無駄にはしない!いくぞ!」

「ふっ、今度こそ!」



ドンとRAKが中央でぶつかり合い、一進一退の攻防!

RAKがブレードで斬りかかるも、巧みに交わすドン。

ドンも拳や蹴りで応戦し、RAKはブレードでしっかりとガード。

まるで三国志の武将の一騎打ちのごとく、激しい攻防が続く…



隼鷹とせるなは、その様子を固唾をのんで見守っていた。

「す、すげぇ…!」

その攻防を傍から見ていたせるなが、ある事に気がついた。

「ドン…そういえば、どうして錫杖を使わないんだろう…??」

「そりゃ、リーダーが拾う隙も与えないってことだろ」

「違うの、その錫杖が、見当たらないの…もしかして…」

「え?!」



「なかなかやるな、さすがはリーダー…だが…」

「おまえは、大事なことを忘れてやしないか?」

「なんだと!」

「リーダー!!気をつけて!!ドンは錫杖を隠し持ってるわ!」

「えっ」

その瞬間、遠隔操作で落下してきた錫杖が、RAKめがけて急降下し、カウンター攻撃!

「ぐぎゃあーーーっ!!」

「あたしの錫杖は、こういう使い方もできるのさ
 せるなが気がついたのは、遅かったようだな」


頭にまともに錫杖をくらい、バランスを崩してしまった。
そして錫杖が回転を始め、RAKの体を吹き飛ばす!

「風速30m!そのまま吹き飛べ!!」

「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

闘技場の外まで物凄い勢いで吹き飛ばされたRAKの体は、そのまま暗闇に吸い込まれていく!
そして、落下したときに地面から消えた!

「まさか…あの暗闇の外は、吹き抜けだったのか?!」

「あのまま地獄行きだな」



「クソッ!こうなったらオレが!」
逆上した隼鷹がドンに立ち向かう。

「ふっ、血気盛んなヤツ。よかろう、今度はお前を恋人の眼前で始末してやる」

錫杖を使わず、今度は隼鷹に左の手のひらを向けた!

そしてドンがなにやらボソボソと語りかける…

「う…な…なんだこれはぁぁぁっ…!!」

何か超音波のような不快なノイズが隼鷹の脳内をめぐる!急ぎ耳をふさぐ。

「…混雑率200%…不愉快路線…開かずの踏切…人身事故…」

「…く、痛いところをついてきやがる…こ、このままでは気が狂いそうだ…」

それは、言霊による呪いの術!

「(くっ…ドラクエのザラキみたいなマネしやがって!)」

「じゅんようさーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」

遠くからせるなが、声の限り叫ぶ!

「わいどどあーーーーーーーっ、ぞうはつーーーーーーーーーーーーっ!!」

それを見たドンは嘲笑う。

「ふっ、恋人の危機に遂に頭がおかしくなったか。哀れな…」

「(そうだ!ドンの呪いと逆で、景気のいい言葉で打ち消せば…)」

「…連続立体交差化事業、新型車両導入、複々線化…」
自分に言い聞かせるようにドンの呪いの言葉を振り払う!

「うぬっ!」

「もう、騙されないぞ!」

「やったね!」
見事なコンビワークで危機を脱することに成功した。

「ふ、せるなめ。余計なことをしおって…ならば!」

その瞬間、猛烈な砂嵐が巻き起こり、砂塵で隼鷹とせるなの間に壁ができた!

「じゅ、隼鷹さーーーん!!」

しかし今度は言葉はおろか、姿も見えなくなってしまった!

「単独、孤立の砂塵…
 これで、邪魔者はいなくなった…」


そしてドンの姿が徐々に見えなくなっていく…

足もとから砂と土埃にに同化し始め、やがて姿が完全に見えなくなった…

「?! ど、どこへ行った!」

その瞬間、隼鷹の背後からドンの蹴りが襲い掛かる!

「ぎゃっ!」

振り向いたが、すでにドンの姿はない。
そして辺りを探しているうちに、今度は正面の土埃の中からドンの左拳が突き出てきた!!

「ぐわっ!」
隼鷹の顔面にクリーンヒット!

そしてドンが再び実体化する。

「風で砂嵐を起こして、それを目くらましにするとは…!」

「どうした、もう降参か?」

「なんのこれしきっ!」

隼鷹飛び蹴り技でドンに反撃するが…

「置き石変化!」

ドンは瞬間的に自らを石化して隼鷹の攻撃をはじき返す!

「うわっ、いててててっ なんだこれは!ドラクエのアストロンかよ!」

隼鷹がひるんだ隙に、素早くドンが背後を取る!

「!しまtt…」

今度は締め技で隼鷹の動きを完全に止めた。
まりむと同じように、はがい締めにされた隼鷹がもがくも、体勢を崩せない。

「うぐぐぐ…」

「おまえ程度の力で、あたしは振りほどけまい」

「雷、火、風、雪、氷、土、石…あらゆる攻撃をして来やがる…
 属性も相反しているのに…こんなことが、実際に可能なのか…?!」


「ふっ、…そういう力を手にしていれば、造作もないことだ」

「そういう力?…ま、まさかおまえの力の源は…!!」

「今頃気がついたか!だが、その先は言わせねぇよ!スクラップになれ!!」

「ぐわあぁぁぁぁっ!!」

激しい破壊音とともに完全に急所を締め技で破壊され、白目の状態で隼鷹が地面に沈む…。



この瞬間に砂塵が消えた。



外で待つしかなかったせるなが、その様子をじっと見ていた。

しかし、消えた砂塵の中から現れたのは…
倒れ、頭をつかまれている隼鷹とドンの姿にがく然とするせるな。

「う、うそ…!!」

ドンはその頭をつかみ、隼鷹を激しく振りまわす!

「や、やめろーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「ふっ、恋人の無様な死にざま、その目に焼き付けてトラウマになれ!」

ドンは隼鷹から手を離し、投げ捨てた!
遠心力もついたため、衝突事故さながらに柱に激しく叩きつけられる!
砕けた破片が隼鷹に振りかかり、瓦礫の山の中に埋もれてしまった。
その瞬間、間髪入れずにドンの錫杖から攻撃が放たれる!

「ゲリラ豪雨&神田川大洪水!」

猛烈な勢いの鉄砲水が放たれ、瓦礫の山ごと、そして倒れているしおんもまとめて濁流で流してしまう!

「じゅ、隼鷹さーーーーーーーーーん!!しおんさーーーーーーーーーん!!」

2人は、濁流の中にのみ込まれていった。
巨大なうず潮が巻き起こり、せるなは近寄ることも出来ない。



「よーし、水よ、引けっ!」

ドンの号令とともに、濁流が一瞬にして消えた。

そして、瓦礫等が流された後・・・ふたりの姿は見えたものの、倒れ、動かない。
せるなの問いかけに、どちらもも応じることはなかった…

「あ・・・」

「水死か…まぁ、コナゴナになるよりはマシだと思うんだな」

ついに、残ったのは、せるなただ一人になってしまった。







「急げ!もうすぐドンの部屋だ!」

「おおっ」

怪人べるずの手引きで、レンジャー達の元へ急ぐNAL。

「ここだ…ぬっ!この荒れ果てようは一体…?それほどまでに激しい戦いなのか」

NALの目には、信じがたい光景が飛び込んできた。

「お、遅かったか!!まさか、せるなを残して、2人が倒れているなんて…RAKもいない…」

絶望感に打ちのめされるNALに、怪人べるずが声をかける。

「いや…そうとも言い切れないぞ」

「なにっ?!」

「最後に残ったのが、せるなということだ。これはドンの計算外だったかもしれない」

「だが、彼女は…」

「私には、そうは見えぬ。一番厄介な人物が残ったと思っている
 NALよ、自分がコレだと思って入隊させたした者を信じるのだ」







「ふふふ、たとえ結束の力ありとはいえ、死んでしまっては元も子もないな」

「・・・なんですってえっ?!」

これまでに見せたことのないような、鬼の形相をしたせるながドンを睨みつける!

「ほう、キレたか…どうせなら、隼鷹が浮気をした時にでもとっておくことだな」

「・・・ゆ、許さん!!」

「おまえも隼鷹やしおんと同じ運命を歩ませてやる!死ね!」

錫杖を振りかざし、再び大量の水を発生させる!

「シェルター・バリア!…?!」

しかし、バリアをものともせずにせるなを濁流が侵入してきた!

「そんなものが役に立つとでも思っているのか!」

足もとからあっという間にせるなの背丈よりも高い濁流に、あっという間に水の中にのみ込まれていく。

「きゃーーーーーーーーーーーーー・・・・・・……(ごぼごぼ)…」


ぶくぶくぶく…

水中に沈みつつあるせるなの視界に、何かが見える。

「こ…これは…?!」

手を懸命に伸ばして触れてみると、何か石のようなものだった。
しがみついて、その浮力で徐々に上に戻って行く。

「これって…何かの残骸…?!あ!これはさっき粉々に砕いた…」

隼鷹を仕留めた時に発生した柱や床の残骸が、こちらにも流れてきたのだった。

「ドンの魔力とはいえ、ここはまさに今は海…!これだわ!」



せるなが水中に沈んで、5分が経過しただろうか…

「どうやら、せるなも海の藻屑と消えたようだな」

「そうはいかないわよ!」

波の奥から、せるなが現れた!
大きな石の破片の上に乗り、サーフボードのように乗りこなす!

「なっ…?!」

「沖縄出身の女を甘く見るなぁーーーーーーーーーーーーっ!!」

飛び掛かったせるなのロッドスピアが伸びて、刃先がドンの肩口にを突き刺さる!

「うぐっ!」

ドンが攻撃を食らった瞬間、水が消えた。

「沖縄は、日本でいちばん台風が来る土地…この程度は、慣れっこよ!」

間髪入れず、さらに攻撃を仕掛けようとするせるなに

「肉弾戦で私に勝とうと思っているのか!」

今度はせるなのロッドスピアに冷静に対処し、わずかな隙にカウンターを叩き込む。

「うっ…!」

「詰めが甘いわ!」

そしてせるなの体をつかんで真上に放り投げた。
追いかけるようにドンも飛び上がり、浮いたせるなの体をキャッチする。
そのまま、うつぶせの体制にしたせるなを下にして、地面に向かって斜め方向から突っ込んでいく!

「勾配43‰落とし!」

せるなは頭から地面にこすりつけられるように叩きつけられた!
そのまま倒れ込むせるな…

「さしものメトロレンジャーも、これで終わったな」

「…なんの、まだまだぁっ!」

「!?」

「ドン!あなたの最大の誤算は、この私を最後に残したことよ!」

いつになく強気になったせるなに、戸惑いを隠せないドンであった。

「な、あの技を食らって生きていられるとは?!」



血だらけになりながら、せるなの目は死んでいない。



「私はね、まだまだおねんねするわけには、いかないのよ!」

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