メトロ☆レンジャー
第6話 中編
「ドンあさみ登場!せるな絶体絶命!」
赤:RAK
黄:隼鷹
青:とわいせるな(トーザイ・ブルー)
緑:しおん
薄グレー:ドン・あさみ
(白:ナレーション他)
それよりも時はさかのぼる…
作業員の人達を地上に避難させたせるな。
「まさか、こんな形で変身が出来なくなるなんて…」
「とんだお荷物になってしまったようだのぅ、せるな」
どこからともなく声が…トーンの低い、女性の声である。
「?!だ、誰っ!」
そこに現れたのは、あの南砂町で出会った、自称鉄道ファンの女性だった!
「何故あなたが、メトロレンジャーのことを?!」
「ま、まさか…あなたが!」
「ふふふ・・・」
その女性は凄まじい風に覆われ、風が収まった時に、黒い服に身を包んでいた。
長いスカート丈の部分に3色で打ちぬかれた「RubberScream」の文字。
腰まで入ったスリットから見える「絶対領域」。
「あたしが、ゴムタイヤ同盟首領・ドンあさみ!」
「な、何ですって!!」
「怪人べるずの影で必ず糸を引いている人物がいるとは思っていたけど…」
「ふふ、今まではヤツに任せていたが、どうも弱小怪人ばかり生み出しやがるのでな」
「退屈だったし、運動不足になると美容にもよくないからな」
「な、なめられてる…」(汗
「お?」
2人に駆け寄る影…血まみれの怪人の姿!
「あぁ・・・首領様・・・駅員銃撃してきましたが・・・」
「なんだ怪人テッポウダマ。メトロ職員を討ち取ったか?」
「そ、それが激しい抵抗にあいまして、重傷は追わせましたが・・・」
「襲撃した時に金庫は奪ったんだろうな」
「それが・・・」
「失敗したというのか?」
ドンあさみは鋭い眼光で怪人を睨み付ける。恐れおののく怪人。
「も、申し訳ありません!つ、次は必ず・・・」
「ならん!我が同盟に失敗は許されぬ!敗北は最も重い詰み(=罪)!」
「す、すると私の判決は・・・死刑・・・」
「当然だ!」
せるなは、ただその場に立ち尽くして、固唾を飲んで状況を見守る。
「お前にもこの世に名残はあろう。一度だけチャンスを与える」
「このあたしと戦って勝つのだ。そうすれば自由の身にしてやる」
「そ、そんな首領と戦って勝つなんて…」
「いや・・・オレも同盟の端くれ。もしかしたら倒せるかも」
フラフラになりながら怪人テッポウダマが立ち上がる。せるなが思わず駆け寄った。
「やめてー!これ以上あなたが傷つくことは無いわ!」
「離してくれ!俺が生き残るにはこれしか方法が無いんだ!」
怪人テッポウダマは、持っていた拳銃の残りダマをすべてドンあさみに向かって発砲した!
しかしドンあさみはその場からまったく動かず、弾丸を素手で弾き飛ばした!
「す、素手で弾丸を止めるなんて!なんて動体視力…!」
怪人テッポウダマは戦意を失い、逃走し始めた!
「あ、あわわわわわ」
それを見たドンあさみは右手を高く上げた。
「敵に後ろを見せることは、死を意味するのだ!」
掌から黒いオーラとともに、巨大なゴムタイヤが!そしてそのタイヤには、無数の刃が!
「死して己の罪を償え!そして私の力となるのだ!」
「モーター・キル・サイクリング!」
凄まじいスピードで放たれたタイヤが、テッポウダマを追いかける!
「うわぁぁぁぁぁっ!」
「キャーッ!」
テッポウダマは、放たれたゴムタイヤに轢き殺された。
ゴムタイヤですりつぶされ、損傷の激しい死体が更に切り刻まれ、壮絶な現場となった。
「うっ…」
目を覆うような現場を目の当たりにしたせるな…
「さて…軽い準備運動も終わったところで、次はお前だ。とわいせるな!」
「あ…あなた、彼は仲間でしょ!何てことを…」
「ふふ…役にたたないヤツは死あるのみ。強い者だけが生き残る、それが鉄道業界だ!」
「そ、そんな…絶対に違う!間違ってるわ!」
せるなはロッドを持って構えた。
「私一人でも、戦ってやる!」
「ふふ…可愛い顔に似合わず、なかなか強気だな…気に入ったぞ」
「ここでは変身できまい、ついて来い!」
ドンあさみは高く跳躍し、ビルとビルの屋上を次々と渡りながら北の方へ進んでいった。
「あっちは…早稲田の方だわ!」
しかし変身の出来ないせるなは、ドンあさみのように追いかけることが出来ないので都バスで移動。
西早稲田駅設置予定現場に、ドンあさみがいた。
「ここは…西早稲田駅?」
「これが何を意味するかわかるか」
「ここは、東西線との交点となっている場所だ。ここなら、お前だけなら変身できるだろう」
「変身の出来ないメトロレンジャーを討ち取っても、何の足しにもならないからな」
「なんて余裕なの…その鼻っ柱、へし折ってやるわ!」
「チェンジ!メトロレンジャー!」
「トーザイブルー参上!覚悟!ドンあさみ!」
「メトロ・快速ー!」
光に包まれて、スピードアップしたブルーが接近戦を試みる。
「ふふ…その技は既に研究済みだ!」
ロッドで攻撃する直前に、目の前からドンあさみが消えた。
「?!」
「ふふ…遅いぞ!止まってみえるわ!」
背後に回ったドンあさみが攻撃を仕掛ける!
長いスカート丈が、鋭利な刃物と化しブルーの背中を斬りつける!
「きゃあっ!!」
「ふ、どうだ。あたしのキル・スカートの味は!」
せるなが見てみると、ドンあさみはポケットに手を入れたままだ。
左手は、長い袖の中から出してもいない。
「言っておくが、あたしは今の攻撃をかわすのにパワーを10分の1も使っちゃいない」
「お前の攻撃をかわす程度なら、これで十分だからな」
「な、何ですって!」
「それ、今度はこっちから行くぞ!」
せるなは身構えた。
ドンあさみは右手をかざした。手の先には灰色の雲が発生し、辺りを覆った。
そして空から降ってきたのは…雪の結晶!
「こ、これは…??!」
「ヘル・ブリザード!」
その瞬間、雪の結晶は吹雪となり、付近一帯を雪化粧へと変えた。
「す、すごい吹雪で前が見えない…!」
「東京の電車は、雪に決定的に弱いからな!」
「何て的確な判断…」
吹雪の影響で、メトロ快速の効果が切れてしまった。
「本当の地獄はこれからだ!デス・ストーム!」
雪の結晶が、今度は氷の飛礫に変化し、雹となってブルーに襲いかかった!
「うわぁーっ!」
数が多くて避け切れず、多くの塊を食らってしまった。
ブルーがその場にダウンする。
「うぅっ…」
ボロボロになったが、なんとか立ちあがるブルー。
「さすがメトロレンジャー この程度では死なないか…」
「よーし、ならばお前には東西線ならではの技でも見せてやろうか」
ドンあさみが右手をかざし、吹雪が収まった。
入れ替わりに浮かび上がったのは…巨大な火の玉!
「ま、まさか氷と炎を同時に使いこなすなんて!」
火の玉は分裂を繰り返し、ドンあさみの頭上で7つになった!
「ブルー…いや、東西線の使い手とわいせるなよ!同じく東西線の技で朽ち果てるのだ!」
「ナンバー・ファイアボール!」
「(は、速い!)」
火の玉が高速で、一斉にブルーめがけて襲いかかった!
次の瞬間、大爆発と共に、ブルーが炎に包まれた…
「とわさーん、どこだー!」
その頃、RAK・隼鷹・しおんの3人は地上に出て、せるなを探していた。
「ねぇ!あっちの方で今、スゴイ音がしたよ!」
「北か…あれは早稲田の方だな」
「何かあったのかもしれない。行ってみよう!」
「ここは…西早稲田の工事現場だな」
「爆発事故があったわけでもないね。さっきのは一体?」
「あぁ!みんなあれを見ろ!」
辿りついた一行が見たものは、ボロボロになって横たわるせるなと、黒いコートに身を包んだドンあさみの姿だった。
「せるなちゃん!」
「貴様、何者だ!せるなに何をした!!」
RAKの拳が怒りに震える。
「あぁっ!思い出したぞ!彼女は…」
「何だ隼鷹、おまえまた飲み屋で女を引っ掛けたのか!だからせるなにいつも…」
「違うよRAKさん!ほら!いつか下高井戸で話したじゃないか!」
「?」
「踏切の手前で、お年寄りを助けた人なんだよ!」
「何を言ってるんだ!そんな人がなぜせるなを攻撃するのだ!」
「ふふ、隼鷹の言うことは正解だ」
「何だと!なぜ俺たちの名前まで知っている!さては貴様悪の手先だな!」
ドンあさみはかすかに笑みを浮かべながら…
「手先?ふふ、なめてもらっちゃあ困るねぇ…」
ドンあさみは近くにあった工事用の杭を、なんと片手で引き抜いた!
「うわっ、なんて怪力…!」
そして片手で振り回し、3人を弾き飛ばした!
杭で弾かれ、3人が工事用の壁に叩きつけられた。
「くそっ…」
「うぐっ…何てパワーなんだ…」
「うう…」
ドンあさみは杭を捨て、足元に横たわるせるなを3人のいる方へ蹴り飛ばした。
「メトロレンジャーよ、次にあった時が、お前たちの命日だと思え」
「その時は、4人まとめて交通資料館に標本として展示してやるよ」
「な、何だと…おまえは一体…」
「この場で殺してやってもいいんだが、あいにく昼飯の時間でな」
「急がないとランチタイムの時間が過ぎるし、お前達などいつでも倒せるからな、ふふ」
「くそっ、なめやがって…」
3人には名乗ることなく、ドンあさみは風の中に消えた。
しおんがせるなを抱きかかえる。
「せるなちゃん!せるなちゃん!」
せるなの返答はない。
「でも大丈夫だ、脈はある。早く病院へ!」