メトロ☆レンジャー

第6話 後編
「明かされるNAL司令の過去…」


:RAK
:隼鷹
:しおん
:NAL
薄グレー:ドン・あさみ
(白:ナレーション他)


「命に別状はありません。二ヶ月ほどでよくなるでしょう」
医師の言葉に、安心する一同。

「しかし、火傷と凍傷を同時に起こしている。普通ならば死んでもおかしくない状態でした」

「そうだったのですか…とにかく、ありがとうございます」
医師に一礼するRAK。

そして医師がその場を離れると、しおんが口を開いた。
「あいつ…一体何者なんだろう」


程なくして、連絡を受けたNAL司令がかけつけた。


「おぉ、NAL司令!」

「遅れてすまない。で、せるなちゃんの病状は」

「はい、命に別状は無いですが、全治二ヶ月だそうです」

「それは思ったよりも重傷だな。一体誰に?」

「はい…怪人べるずの一味だと思うのですが…」

「なんか、女性だったんですよ。しかも美人

「名前、名乗らなかったし、とわさんは意識を失ってたし…」


隼鷹が近くの公衆電話に備え付けられたメモ帳に、その特徴を図示した。


「こんな感じだったかなぁ…長い髪で、スリットの深いスカートで…」

「目元がちょっとキツイ感じだったね」

「…NAL司令?どうしました?」


NALのメモを持つ手が震え出す。


「ほ、本当にこいつなのか…!!」

「知ってるんですか?なんだ、隼鷹の引っ掛けた女じゃなかったのか

「だから言ってるじゃないですか!」

「司令、ご存知なのですか?」

「こいつは…紛れも無くゴムタイヤ同盟の首領 ドン・あさみだ…」

(R・隼・し)「えーっ??!」

「し、信じられん…こんな女性が首領だとは」

「最近は鉄道業界にも女性が積極的に進出しているが…悪の世界にまでその波が」

「じゃあ、怪人べるずは、一番ではなかったのですか?」

「あぁ…怪人べるずは、彼女の手先に過ぎない

「まさか…あいつを裏で操る人物がいたとは…」

「とわさんの予想は当たってましたね!」


NALが悩み出した…


「うーむ、またしてもあの悪魔が…」

「NAL司令は、過去に戦ったことがあるのですか?」

「…あぁ…君達には話したことが無かったな。いい機会だ、話してやろう」

3人はジュースを片手に、待合室の椅子に腰掛けた。
前の椅子に、向き合う形で司令が座る。

「まだ、メトロレンジャーではなく、私はジプシーのアイアンファイターだった頃…」






・・・・・・・・・・・・・十数年前 大阪・・・・・・・・・・・・・

大阪港…

「ふふふ…これで大阪の交通網も…また私のコレクションが増えるわ」

「待てっ!」

「ん?なんだ貴様は。邪魔だてすると容赦せぬぞ!」

「私はアイアンファイター・NAL。お前の好きなようにはさせぬ!」

「アイアンファイター?ふふ、新手の賞金稼ぎか」

「いいだろう、この首、取れるものなら取ってみな!」



ドンあさみは、右手をかざし雨雲を発生させた。
「くらえ、地獄のシャワー!」

「くっ…夕立攻撃か!そうはいかぬ、アイアンワイパー!」

「ふふ、ただの雨だと思うのかこれが!」

「うっ…これは嵐!」

「続きだ!ビッグ・ストーム!」
さらに強力になった風雨がNALに襲いかかる!



「ふふ、消し飛んだか。もろいものよのぅ…」

「そうはいくか!」

「?!なっ…貴様地面に潜っていたのか!」
トンネル上に地面を潜り、接近していたNALが一撃を浴びせる!

「くらえ!アイアンラッシュパンチ!!」
大都市の過密ダイヤを連想させる素早いパンチの嵐で、ドンあさみがひるんだ。

「くっ…!なかなかやるな…今までのヤツとは手応えが違うぜ…」



「お前の調べはついているぞ。ドンあさみ!ゴムタイヤ同盟のリーダーよ!」

「ほぉ、あたしの名前を知っているとは」

都市交通をゴムタイヤ一色にするために、全国の地下鉄レンジャーを荒らし回る悪魔がいると聞いて、追ってきたのだ!」

「ふふ…まるでストーカーだねぇ」

「なにしろお前を倒しに行って、帰ってきた賞金稼ぎはひとりもいないということで、おまえの首には今や破格の値がつけられているのだ!」

「ふふ、面白い話だが、あたしには興味は無いな」



「その先は、地獄で閻魔と廃車車両相手に存分に語って来い!」

ドンあさみは再び右手をかざし、今度は冷気を起こした。
「目に物見せてくれるわ!ヘル・ブリザード!」

「な、なんだ…雪の結晶?」
同時に突然の猛吹雪となり、辺り一面が雪化粧になった!

「雪か!」

「これでは、決まった通りの動きも出来まい!」

「とどめだ!デス・ストーム!」
氷の塊がNALに一斉に襲いかかる!

「うわぁーっ!」

「ふふ、あっけない…」
勝利を確信し、振りかえるドン・あさみ。


だが…


甦ったNALが背後から、ドン・あさみめがけて突進した!
「?! ぐっ!!」
不意の一撃を後頭部に食らい、片ヒザをついた。

「…お前!あのデス・ストームを食らって生きていたのか!」

「思いっきり食らったさ、89発くらい」

「何?」

「確かに嵐は手強い…だが動かなければダメージは最小限に抑えられる!」



「何をこしゃくな!死ね!」
かざした右手から現れたのは巨大なゴムタイヤ!

「おぉっ!」

「くらえ!モーター・キル・サイクリング!」
巨大なゴムタイヤがNALめがけて突進してくる!

「そうは行くか!ゴムは刃物に弱い!
NALが鞄の中から取り出したのは、着脱式のハンドル部品!

「アイアン・ソード!」
ハンドルの部分からオーラの刃が現れた!
そして突進してくるゴムタイヤにひるまずに突き刺した!

「ふふ、それで破ったとでも思ってるのか!」

「何!な、回転がどんどん…!!」

「バカめ!我らのゴムタイヤはパンク対策済みだ!」
ゴムの割れた中から、もうひとつのゴムタイヤが刃をまとって現れた!

「しまった!罠か!」

「切り刻まれるがいい!」

「ぐわあぁぁっ!!」
NALは刃のゴムタイヤに跳ね飛ばされた!


「くっ…なんとかかすり傷で済んだぜ…」

しかし、通りすぎたゴムタイヤは再び進路を変えて、背後からNALに襲いかかる!

「しまった!」

「ふふ、逃げても無駄だ!そいつはどこまでも追っていくわ!」

「(待てよ…どこまでも追っていくということは…)」

「地獄の果てまで、逃げ惑え…む??」
NALは何時の間にか、ドンあさみの背後に回っていた!
すかざす羽交い締めにする。


「地獄の果てまで、追ってくるんだろう?!」

「うわっ、やめろ!お前の相手は後ろだー!」

ゴムタイヤは2人めがけて突進してきた!
NALはドンあさみの体を盾代わりに防いだ。
刃を正面からくらい、腹部から多量の血を流すドンあさみ。


「ウォォ…」

ドンあさみもかなりのダメージを追った。


「ハァハァ…もはやここまでだな!」
NALもデス・ストームのダメージが効いてきた。


「何を…あたしは完全たる生命体だ。貴様ら如き下等生物になど、絶対に負けぬ!



ドンあさみが先に立ちあがり、再び右手をかざす。

「(こやつ…これからの技に全力を使うつもりだ…!!)」

右手の先から出てきたのは、巨大な火の玉!
「あたしにこの技を使わせるまで、生きていたことを誉めてやるぜ!」

「その技…大阪の地下鉄レンジャーの技に似ている…!」

「おぉ、よく知ってるじゃないか。さすが鉄道マニア

「あたしは今までこの手で倒してきた者たちの技を会得している。」

「そうだ、それはナンバーファイアボールだな!駅名の数字の数だけ発射できるという…」

「その通りだ、これはあたしが改良した強力版さ」

「そうだ!確かあまりに強力過ぎて、使い手も少ないばかりか、使いこなせたものも少ないという…」

「そうだな、確か9発使ったところで、タニマチとやらがくたばったな」

「まぁ…あたしはその程度では終わらせないがな…」
火の玉は見る見るうちに大きくなり、分裂を始めた!その数は倍の18!


「(しまった…そろそろ船が出る時間…)」
腹から血を流しながら、ドンあさみの手から火の玉が解き放たれた!

「(な…何という大火球…!)」

「くらえ!ナンバーファイアボール!」

「は、速さがダントツで違う!ふ、防がねば!」
NALは防御の体制を取ったが、防ぎきれずに数発を食らってしまった。

「うわあーっ!」
NALの体が、炎の海に包まれる!



「しまった…時間切れだ…NALとやら、勝負はお預けだ!」

「だが覚えておけ。時既に遅し!あたしのゴム・シードは着実に植付けたのだからな!!」

火に包まれるNALは、逃げるドンあさみの影だけを見ることが出来た。

「しまった…逃がしたか!その前に、ここから脱出せねば!」

「アイアン・ベンチレーター!」
一時的に周囲の温度を下げる技を使い、体を冷やしてNALは火の海から脱出した。

「ドン・あさみ…お前の首は必ず討ち取ってやる!」
静寂に包まれた大阪港。
NALは一人、雪辱を誓って、大阪の地を後にしたのだった…。






・・・・ふたたび病院の待合室・・・・

「…話はこんなところだ。」

「司令が昔、戦っていたんですね…」

「…恐ろしい強さだわ!」

「そして私は、この首都圏にやってきて、今は君達の司令を務めさせてもらっている」

「RAKよ、君の使っているあの武器…あれは、その時のものだ」

「あのハンドルブレードで、俺達と同じように戦っていたんですね」

「そうだよ…あの時はまだ各地のレンジャー部隊も強くなく、ドンあさみに次々と討ち取られていった…」

「しかし…一体あいつ何歳なんだ?」

「(聞き流して)あの時、ヤツを討ち取っていれば、君たちをこんな目に遭わせることもなかったのに…」

「司令、それは仕方ありません。それだけ、ドンあさみが強かったということです」

「そうです司令さん!追い払っただけでもすごいことですよ!」

「違うんだ…ヤツの残していったゴム・シードの存在に気がつかなかったのだ」



ゴム・シード?なんですかそれは」

「ゴムの種?」

「…もしやそれは、ゴムタイヤの種のことでは?!」

「…その通りだよ、RAK」

「ヤツは、自分が逃げる時には既に各地に、ゴムタイヤの礎を残していったのだ」

「!それでヤツは大阪にいたのか!」

「大阪?地下鉄、ゴムタイヤでしたっけ??」

「いや、第3軌条だが…あ!わかったテクノポート線だ!!」

「そう…ヤツがゴムシードを残していった効果が大阪神戸、そして広島で後に発動したのだ」

「ポートライナー、アストラムライン…すべてが結ばれましたね!」

「特に大阪は、同じOTS線なのに地下鉄規格とゴムタイヤ規格の2つに分断され、おかげでその後の大阪の都市交通は連携が上手くいかなくなったのだ…」



「(…はっ!!)」
その話を聞いた隼鷹の様子がおかしい。落ち着きが無くなってきた。



「さぁ、昔の話をしても始まらない。ヤツが現れたとなれば話は別だ」

「昼食がてら、本部で作戦を練ろう」

「はい」

「行きますか」

「あ…オレは、とわさんが起きるのを待ってから行きます

「もぉ〜しょうがないねっ」

「まぁ、隼鷹の心配する気持ちもわかるし、せるなちゃんも起きた時に誰かいないと寂しいだろう」

「隼鷹、できれば今の話、彼女にも教えてあげるといい。」

「はい、わかりました」

「早く来いよ!」

3人は、病院を後に本部へ向かった。



一人残った隼鷹は、せるなの病室で、せるなが起きるのを待っていた…


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