メトロ☆レンジャー
第8話 前編
「決戦前〜3人の特訓開始」
赤:RAK
黄:隼鷹
青:とわいせるな
紫:NAL
(白:ナレーション他)
メトロレンジャーの司令部。
代々木公園から引き上げてきた3人は、ひとまずNAL司令にその経過を報告していた。
しおん敗北というあまりにも重い現実に、NAL司令の表情も硬かった。
「うーむ…あのしおんがやられてしまうとは…」
「すいません司令。オレ達がだらしなかったばっかりに…」
「責任を痛感してます…」
「いや、待つんだ2人とも。君達は決して悪くない。」
「それで、しおんちゃんを返してほしければ3日後に新橋に来いと…」
「新橋か…」
「何か?」
「いや…」
「とにかく、ここのところ怪人たちの動きはより活発になってきた気がする」
「そうですね、それは感じています」
「何か、焦りのような物を感じるのだ…」
「焦り?」
「これまでの怪人とその一派といえば、どちらかというと運行障害のみを目的としていたのが多かった」
「そうですね…」
「それがここのところ、明らかにレンジャー諸君の命を狙うような輩が多くなっている」
「確かに…」
「今回しおんだけを狙ったのも、それに起因していると思うのだ」
「じゃあ、3日間なんて言わずに早くしおんちゃんの救出を…!」
「殺されては手遅れです!」
「いや…殺しはしないだろう…」
「何故?」
「もし、しおんの命を奪うのなら、その戦いの時に奪っていたはずだ。にもかかわらず人質としたのであれば、これはおそらく君達を呼び寄せる為の策だと思う」
「…なるほど」
「不謹慎な言い方だが、これはある意味チャンスかもしれない。災い転じて福となす、だ。」
「救出と同時に、ドンや怪人べるずを叩く、ということですか。」
「そうだ。これが最初で最後のチャンスかもしれない。」
「失敗は許されませんね!」
「うむ…」
先ほどから何かを考えているようなNAL司令の姿を、せるなだけが察知していた。
「(今日の司令…何か…隠しているのかな…様子がいつもと違う)」
「とわさん?どうしたの?」
「あ?いや…何でも無いの。」
「司令、3日後までの間は…」
「うん、それではそれぞれの意思で行動してくれ。これまでの技以上のものを身につけるのだ。」
「そして3日後、コンディションを万全にして新橋に集合だ。いいな。」
(一同)「はい!」
3人が退出した後、ひとり司令室に残ったNAL。
ポケットの中から、紙切れのような物を出した。
「明日万世橋で待つ “A”」
「やはり…決着をつけなければいけないか…」
「彼らでは、ヤツには太刀打ちできないだろう…私がなんとかしなければ…!」
西武鉄道・山口車両基地にて…
A「おぅ隼鷹、こんなものでいいのか」
「あぁ、ありがとう。こんな無理を頼んで申し訳無い」
A「何言ってるんだ、元同僚じゃないか」
B「よーし、できたぞ、山口線車両をモチーフにした特訓マシンの完成だ!」
C「どうだ、ゴムタイヤの連中と争うのならこれがいいだろう」
A「新交通とかで浮かれていなければ…」
B「せめて、これだけでも協力させてくれ!」
「ありがとうみんな!絶対にあいつらを倒してやるぜ!」
かつての仲間達の力を借りて、隼鷹の特訓が始まった!
立川・某バッティングセンター…
今日のバッティングセンターゾーンは「貸し切り」になっていた。
中央には、せるなが独りきり。店員が1人だけ傍にいた。
店員「とわさん、本当にやるんですか?」
「お願い、これだけはやらせて。」
店員「意思は固そうだからいいですけど…本当に気をつけて下さいよ?!」
「まかせて…」
そう言うと、バッティングケージの中に入っていった。
「(あのとき、ドンの攻撃をメトロ快速を使ってでも回避できなかった…)」
「(メトロ快速は、ベースとなる自分が素早くなければ効果が薄い…)」
せるなは変身もせずに、野球のキャッチャーマスクだけを身につけて、バッティングゾーンの真ん中に立っていた。
「(このスイッチを押せば、私めがけて一斉にボールが飛んでくる…)」
「(この豪速球をかわして敏捷性を身につけて、ドンの攻撃をかわす特訓とする!)」
せるなは躊躇せずに、スイッチを押した!
その頃RAKは、東京都から外れた、ある場所の山の中にいた。
傍らには古ぼけた1冊の本があった。
それは、かつての丸の内線担当・先代の「赤の貴公子」マルノウチレッドが書きつづった記録だった。
「(先代の記録によれば、先代は武器に頼らない戦い方…すなわち今のグリーンのような戦い方をしていたという…)」
「(今までのオレといえば、司令から継承されたブレードを使うか、運行障害を防ぐ技のみで、直接武器を使わない戦いというのものには縁遠かった。)」
「(だが、それじゃダメなんだ…それだけでは、しおんを破った怪人べるずにすら勝てない)」
「(この本によれば、丸の内線の戦士にだけ可能だと言う大技があるという…しかし、その詳細はナゾのままだ。)」
RAKは近くの丸太をかつぎあげた。
「(この特訓で、その技の片鱗を見つけ出し、モノにするんだ!)」
かつぎあげた丸太を高く投げ、RAKも後を追うように高く跳躍する!
「(この丸太を怪人べるずとするならば…!)」