メトロ☆レンジャー

第8話 後編
「10年越しの因縁…」


:NAL
薄グレー:ドン・あさみ

:RAK
:隼鷹
:とわいせるな

(白:ナレーション他)


NALがひとりで向かったのは、秋葉原駅近くにある、万世橋だった。
かつてここには「万世橋」という駅があったが、戦前に廃止になっている。
近くにあった交通博物館は、埼玉県さいたま市へと移転したが、鉄道を語るには欠かすことのできない場所である。

道の途中にある、排水溝のような穴。
実はこの地下に万世橋駅が眠っているなど、誰も気がつかないだろう…。
時の流れに埋もれた地下へと、NALは躊躇せずに進んでいく。


少しだけ、広い空間に出た。
おそらくここは元々ホームだった場所なのだろう。


「…約束通り来たぞ!ドンあさみよ、出て来い!」

暗闇に向かいNALが叫ぶ。すると…



「うっ…!この風は…!!」

突如巻き起こる風は、闇の方へと吸い込まれるように吹く。

やがて、闇に六角の魔法陣が浮かび上がった!!



「・・・よく来たなNAL。ここが、おまえの墓場だ!」



魔法陣の中から、ドンあさみが現れた!

「私をわざわざ呼び出すとは、何のマネだ!」

「何のマネだと?おまえとは決着がついていないからさ」

「まぁ、そんなところだろうが…」

「最近の怪人達といい、今回のべるずの行動といい、ずいぶんと荒っぽくなったものだな」

「ふふ…よいではないか。面白い方が…。もう、お遊びはここまでだ」

「それは、こっちのセリフだ!今度こそ仕留めてやるぞ!」



NALはアイアンブレードを持ち、戦闘態勢に!

「おや、それはRAKにあげたんじゃなかったのか」

「RAKにあげたのとは、違うタイプ。これは私にしか使えない京急仕様だ!」

「そうか…さすがは全国を股にかけたアイアンファイター…」

「ならば、あたしもたまには武器でも使わせてもらおうか」

「何?!」



魔方陣の中から現れたのは、真っ黒な錫杖だった!

「さぁ、始めようか」

錫杖を右手に持ち、ドンあさみも構える。



「し、錫杖?!…こいつが武器を使うとは予想外だったが…やるしかない!!」


2人同時に、一斉に互いをめがけて突進!戦いの火蓋が切って落とされた!









「くたばれっ!!」
ドンあさみが錫杖を振りまわす!
NALは寸前でかわしたが、錫杖はコンクリートの壁を一気にえぐった!


「(…こ、こいつの威力は…!!なんて破壊力だ…!)」

「ほーらどうした!まだまだこんなもんじゃないぜ!」
今度は真上から振り下ろして襲いかかる!

寸出でかわし、振り下ろしのスキに反撃に出るNAL。
「くたばるのは、お前だ!!」

ドンあさみの左側から斬りかかる…が!!

「…引っ掛かったなぁ〜?」

「何?!…!!」

ドンあさみが左腕の袖を振り払うと、それだけで猛烈な風を発生させてNALを吹き飛ばした!
勢いのあまりNALは壁に叩きつけられた!

「ぐわっ…!!」

「おまえ、勝負勘が鈍ったんじゃないのか…?」

「くっ…まさか飛び込んでくるのを読んで、わざと大振りをするとは」



「ふふっ、まだまだこんなもんじゃないぜ!」
右手で錫杖を回転させ、次の攻撃にかかるドンあさみ。

「なんの、これしき!」
NALもすぐさま反撃に出る!



ドンあさみが錫杖で突こうとすると、寸出でNALがうまく避けて反撃に出る!
NALが斬りかかろうとすると、ドンあさみは錫杖で刃を止める!
2人の一進一退の攻防が続く。



「むっ…なんだ、コイツ…急に動きが…」

「戦っていて、気がついた!お前は錫杖を使っている間、右手がふさがれて一切魔法を使えない事を!」
「それがわかれば、思い切り攻撃するまで!」


そしてすぐさま斬りかかるNALを、ドンあさみがかわしつづける。

「甘い…お前は甘いぞ…」
ドンあさみは正面に錫杖を構えて回転させた!
回転の速度が速くなり、錫杖の両端からあのファイアボールが現れた!

「おおっ…!ま、まさか…!」

「あたしは、ここからこういう芸当だって可能なのさ!」

現れたファイアボールはドンを取り囲む様に現れた!その数は、24!

「ファイアボールは、ただ飛ばすしかできないならば下等なヤツのお遊び。」
「あたしなら、こうするのさ!」


ファイアボールを身にまとったまま、そのままNALに向かって突進してきた!

「アイアン・ベンチレーター!」
すぐさま冷房を発動させて自らの体を冷やすNAL。

「ファイアボールと同時に攻撃を加える気か!そうはいかんぞ!」

「ふふ…」



ファイアボールがNALめがけて突進!
しかしベンチレーターの効力で、炎はNALにまで届かない。
そして中心にいるであろうドンあさみに向かい攻撃を仕掛けようとしたが…

NALのアイアンブレードは空振りした!

「い、いない?!」

「…!」

「うわっ!し、しまった!」
ドンあさみは背後に回っていた!NALは物凄い力で背後から首を締めつけられる!

「ファイアボールは、目くらましだ!」

「うぐっ…!!」
締めつけられて力が弱るNALにかかっていた、ベンチレーターの効果が切れてしまった。
そして残りのファイアボールは、身動きのできないNALめがけて突進してきた!

「あの時の、お返しだよ!」
「ぐわぁぁっ!!」
NALは数発のファイアボールをまとめて食らい、大きなダメージを受けてしまった。



「うぅっ…」
全身に傷を負いながらも、なお立ち上がるNAL。

「ほぅ、まだ生きていたか…」

「わ、私は…まだここで死ぬわけにはいかないんだ…彼らの為にも!」

その頃、メトロレンジャー達は、姿の見えないNAL司令を探していた。
足取りを辿って行き、情報の途絶えた秋葉原近辺を3人で探し回る。

「いたか?!」

「いや、こっちにはいませんでした。」

「そうか、オレは電気街の北側を探してみる!」

「オレは末広町の方を探します!」


2人は再び走り出した。

「俺達に黙って、どこへ言ってしまわれたのだ…!」

「司令〜!どこですか〜?!」



2人とは逆方向、神田方面へ歩き出すせるながつぶやいた。

「…司令…私達に…何を隠しているの?!どこへ行ったの?!」

NALとドンあさみの戦闘はまだ続いていた。
明らかにドンあさみの方が優位だった。

「コイツ…旧知のよしみで命だけは勘弁してやろうと思ったのに…」

「そんなに、あたしに殺されたいか!」

再び錫杖でNALに襲いかかる!



「わ…私が立ち上がるのは…これを試すためだ!!」

「なに?」



気力を振り絞り、NALの広げた両手から発生したのは、魔法陣のようなリング!


「…?!」




「アイアン・ループリング!」

NALから放たれたリングが、ドンあさみに向かって発動!一瞬にしてドンあさみの回りで動きを封じた!





「な…なんだ?!これは…身動きが…」




「これだけは使いたくなかったが…彼らには扱えない…運行障害をヒントに考えた技だ!」
「それは、悪天候で身動きできず、折り返し運転をするメトロのように…」





動けないドンあさみに向かって、ブレードで全力で斬りかかる!!

「これで最後だ!ドンあさみ!」









「むむむ…あたしを見くびるんじゃないぞ!」


「全天候型シェルター発動!!」

「な、何っ??!」



ドンあさみの体から、一斉に発生するシェルターが、リングを破壊した!

「甘いぜ…ゴムタイヤ元祖・札幌は地上区間も地下同然、全天候型シェルターで囲まれていることを覚えておけ!」

動けるようになったドンあさみは、錫杖で飛びかかるNALを叩き落した!
まともに錫杖をくらい、NALは地面に叩きつけられた。



「あぁっ…」

身動きできず、横たわるNALに向かいドンあさみが近づく。

「(こ、この私が…きょ、恐怖で体が動かない…!)」

そしてドンあさみは、こともあろうに横たわるNALの上に乗っかった。

「この分なら…メトロレンジャーは全滅だな…」

「いいさ、入れ替わりにあたし達が首都の鉄道の安全を守ってやってもいいぜ…」

「(い、入れ替わりだと?!…コイツの目的は…まさか…」

「まぁ、お前には旧知のよしみでもあるし、このくらいにしておいてやるが…」


ドンあさみは、自らの顔を、横たわるNALの顔に近づいた。



「この世には、逆らえないものがあるという事を、その身に刻んでおくことだな…」



薄れゆくNALの視界には、赤く光るドンあさみの目と、鋭い牙が見え隠れする唇が近づいてきたことだけはわかった。
直後に、何か空気のようなものを流し込まれたことだけがわかったが、そこで意識は完全に途絶えた…。

「ここは確か、以前司令と訪れたことがある…」

せるなは万世橋の前に立っていた。



「ここに昔、地下鉄の駅があったって、司令に教わった…」
「秋葉原も近いし、もしかすると、この近辺にいるのかもしれないわ」



近辺を歩き回ると、なにやら排水溝のようなものが、開けられたあとがあった。
「なんだろう、これ?」
「もしかすると、これがその駅があったところなのかも…」


直後、強烈な悪寒に襲われた。
「あっ…な、なんだかとてもいやな予感が…」

「こ…怖いけど…ここは入っていくしかないわ!」




暗闇の中、階段を手探りで少しずつ進むせるな。
「ううっ、こ、怖いよぉ…」




少し広いところに出た。これがおそらくホームなのだろう。
「昔の駅だから、改札とホームが同じ階で浅いのね」



「あっ…あれは…?」
ホームに進んでみると、横たわる人影のようなものを見た。
恐る恐る、近づいていくが…



地下にせるなの悲鳴と泣き叫ぶ声がこだましたのは、その直後だった…。



騒ぎを聞いて、遅れて駆けつけたRAKと隼鷹は、絶句するしかなかった…。
RAKが司令を背負い、隼鷹が泣き止まないせるなをなだめ、3人は地上へ向かった。

病院の集中治療室に、司令は運び込まれた。
医師の話を聞いて戻ってきたRAKの表情は険しかった。

「どうだった?リーダー…」

「ダメだ…生体反応はあるが…意識が戻らないらしい…」

「そ、そんな…」



「な…なんてことだ…!」

「明日は、決戦の日だというのに…」

「おそらく、あいつらが…」

「べるずか…ドンね!彼らの仕業に間違いないわ!!」

「きっと、最初に戦力を削ぐ狙いがあったのだろう」



せるなの体は、怒りに震える…
「絶対に、許せないわ!」

「おお!オレもだ!リーダー!明日なんて言わず今すぐ行こう!!」


「待て」


「ま、待てって…やられっぱなしで悔しくないんですか!」

「そりゃ、悔しいし、絶対にあいつらは許せん。」
「だからこそ、冷静になって考えろ」

「…はっ!(いけない、ここで取り乱しては…)」



「それにもう時間が遅い。決戦の場所に指定してきた新橋へ行っても、この時間では真っ暗だ。」
「みすみす、ヤツらの策に乗る事はない。ここは翌朝になるのを待つべきだ」

「(さすがリーダー…こんな時でも冷静に分析してるぜ…!)」

「明日の朝、新橋に直接集合だ。いいな。」

「は、はい」

「わかりました」

それだけ言うと、RAKはその場を去った。
残ったのは、隼鷹とせるな…。





せるなが呟く。
「…本当に、一番悔しいのは…リーダーなんだよね…きっと…」

「そうだね…それを押し殺している感じだった…。」

所変わって、ここは再びいずこかの闇の中…。
怪人べるずは、首領不在を部下から聞き、到着を待っていた。




「遅い…!時間にはうるさい首領なのに珍しい…」




「何が、珍しいんだ?」

「お、首領!いったい何処へ行ってらしたのですか?」

「別に…」

「…?」

「…ちょっと、運動してきただけさ…」




それだけ呟くと、怪人べるずの方へ視線も向けず、消えていった…。

そして、日付は決戦の日に変わっていった…



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