メトロ☆レンジャー
第9話 〜4〜
「隼鷹の智略」
赤:RAK(マルノウチレッド)
黄:隼鷹(ユウラクイエロー)
青:とわいせるな(トーザイブルー)
グレー:怪人べるず・ユリカルマ等
オレンジ:???
(白:ナレーション他)
<前回までのあらすじ>
しおんを救うため、必死に戦うレンジャー隊員達!
そして、異空間では遂にせるながカルマの軍門に…?その結末は…
「さぁ、かかってきやがれ!このオレが相手だ!」
「イノチシラズメ…」
「先手必勝!」
一気に間合いをつめ、隼鷹が先にシャトールに攻撃を仕掛ける!
「ぬぉぉぉぉっ!!」
シャトールの巨体を一気に持ち上げる!
「おぉっ!豪快に行ったな!」
「おりゃぁーっ!」
地面に叩きつける…が!
「?!」
「バカメ!」
「しまっ…!」
「ははは、隼鷹よ!そいつはもともと短い編成ゆえの多関節メカ!
おまえのそのような攻撃を受け流すなど自在よ!」
今度はシャトールが反撃に出る!
巨体ながらも素早く繰り出されるパンチの嵐に、防戦一方の隼鷹。
「隼鷹!何をしてる!反撃せんか!!」
だが、RAKの叫びが届かない。
「どうやらRAKよ、おまえも出番の準備が必要なんじゃないのか」
「(ん…?隼鷹のヤツ…攻撃は一方的に受けているが…目が死んでいないぞ…
なにか策があってのことなのか…?)」
そしてシャトールが大きく振りかぶる!
「トドメ!」
「…待ってたぜ、この瞬間を!」
「カウンター?!」
「!」
「オフピーク・アタック!」
放たれるシャトールの腕めがけて、先に正拳突きを食らわせた!
不意をつかれたシャトールが倒れた。
「ふっ、ラッシュが収まれば、必ず勢力が弱くなる!それを待ってたんだ」
「考えたようだが、そのおかげでだいぶ体力を消耗したんじゃないのかな?」
べるずの指摘どおり、隼鷹の体はバトルスーツを通して大量の汗が浮かぶ。
「(ん…?あれには汗は浮かばない構造のはず…?一体??)」
「さぁシャトールよ!今のうちに隼鷹にとどめを刺すのだ!」
轟音を立ててシャトールが襲い掛かる!
「こいつは汗なんかじゃないぜ!」
隼鷹はその場で両手をかざした。
「くらえ!イエローシャワー!」
なんと、隼鷹のバトルスーツの液体が蒸発して、手の先から雨雲のように浮かび上がる。
そして、勢いのある雨がシャトールに一気に降り注ぐ!
「シャトール!そんなものは動かなければ洗車と同じだ!動くな!」
「ふふ、それが違うんだな!」
「なんだと?!」
見ると、シャトールの動きが明らかに鈍くなっている!
それも、水圧のせいではない。
「その雨…ただの雨ではないな?!」
「そうだよ!」
「隼鷹!バトルスーツには汗はうかばない構造なのに、どうやって?」
「オレのスーツは旧型の7000系ベースなんで、リーダーたちのとはちょっと違うんすよ」
「なんと!」
「あの雨には、オレの汗とか顔の油分とかが混じってるからなぁ」
「潤滑油とは違ってベトベトするから、動きにくいのさ」
「…オマエ、自分でオヤジと言ってるようなもんではないか…」
「へっ、開き直ればこっちのものさ!」
「…(間違った自信かもな…)」
だが、シャトールはまだ反撃に出る!モーターキルサイクリングだ!!
「いいぞシャトール!飛び道具なら関係ない」
「来るか!受けてたつぜ!」
「おい!無茶はやめろ隼鷹!」
離れた場所からリーダーが止めようとするが、隼鷹は一向に引かない。
「もーたーきる・さいくりんぐ!」
シャトールの体から、刃の付いたゴムタイヤが隼鷹めがけて突進してきた。
その軌道から逃げようとしない隼鷹。
「隼鷹!どうしたんだ!このままでは…あぁっ?!」
RAKが見た隼鷹の姿…なんと目をつぶったまま仁王立ちしていた!
そして大きな土煙と轟音と共に、土煙で隼鷹とゴムタイヤの姿が見えなくなった。
「ははは、いさぎよく食らったかな?」
「じゅ、隼鷹!な、なぜ…」
だが、煙の中からすぐに声が…
「やだなぁリーダー、勝手に殺さないでくださいよぉ」
「おぉ!生きているのか!」
「えぇ…しっかりとね!!」
なんと、隼鷹は両手でゴムタイヤを、真剣白羽取りのように受け止めていた!
山口線で特訓の成果が、ここで現れたのだ。
「な、なんということだ!」
「へっ…覚えておけよ!」
「オレがもともと所属していた西武鉄道にも、ゴムタイヤの路線があるんだからな!」
そしてゴムタイヤを持ったままその場からダッシュ!
加速をつけて、逆にシャトールめがけて投げつけた!
「食らえ!掟破りのモーターキルサイクリング返し!!」
従来のモーターキルサイクリングに、隼鷹の加速スピードが加わり、倍の速さでシャトールにゴムタイヤが襲い掛かる!
余りの速さによけることも出来ず、シャトールはまともに食らってしまった!
その衝撃で、体に大きなヒビが!
「今だ!」
加速したまま隼鷹がシャトールの体をめがけて体当たり!
「おぉ!東伏見のラクビーばりのタックルか!さすが西武鉄道ワザ」
「(いや…アイスホッケーなんだけどね…知名度低いのかな)」
その衝撃で、ついにシャトールの体がバラバラになった…。
この瞬間、隼鷹の勝利が確定した。
「やった!やったぞー!隼鷹!」
日ごろ冷静なリーダーRAKも、隼鷹の勝利を喜んだ!
そして、残骸の中から鍵が現れた。これで、しおんの時刻表を取り出せる。
「ん、そういえば時間が…あぁっ!!」
なんと、残り時間が後10秒しかない!!
「しまった、倒すのに時間がかかりすぎた…」
「俺が行く!隼鷹、鍵を!」
隼鷹が鍵をRAKに投げて渡し、全速力でしおんの時刻表の入ったカプセルに急ぐ!
だが、このままでは間に合わない!!
残り9秒…
残り8秒…
残り7秒…
6秒
5秒
4
3秒前!!!
「よーし、リーダー、待ってろ!おりゃぁーーっ!!」
隼鷹は、シャトールの残骸を、タイマーめがけて投げ飛ばした!
2秒前!!!
「くっ…もうダメなのか!!」
1秒前!だがその瞬間!
ガシャーーーン!!!!
激しい音と共に、RAKの真横からシャトールの残骸が、タイマーに激突した!
「今だ!リーダー急いで!!」遠くから隼鷹が叫んだ。
「…ハッ!!」
シャトールの体が電流を止めている間に、鍵でカプセルを開けて時刻表を取り出した。
そして時刻表を持って離れた瞬間、カプセルに電流が走り大爆発が起きた!
「ふう…間に合った…」冷や汗をぬぐうRAK。
「…まさか、シャトールの残骸を使って電流が流れるのを食い止めるとは…考えたな、隼鷹よ。」
「へっ…おまえらなんかには、負けないぜ!…うっ」
やはり戦闘のダメージが大きかったか、隼鷹がその場にしゃがみこんだ。
「隼鷹、よくやったぞ!あとは、オレに任せてお前は休んでいろ」
「ええ…少し休ませてもらいますわ…」
隼鷹から、RAKにバトンタッチ!
「そ、そういえばとわさんは?!」
隼鷹は、異次元に連れさらわれたせるなのことを即座に思い出した!
「うむ、気がかりだが、オレがべるずをあと20分で倒せば…」
「ところが、そうも行かないのだよ」
「なんだと?!」
「私が持っている鍵は、しおんを助けるための鍵だ!」
「何?!そ、それじゃ40のところにあるカプセルは…」
「そうだ、せるなが勝利して帰ってこない限り、開くことはない」
「な、なんてことだ!」
「卑怯だぞ!」
「何とでも言うがいい。それともお前達は、せるなが死ぬと決めてかかってるのか?」
「くっ…」
「信じるさ!戻ってくるのを…必ず!!」
その頃…ユリ・カルマの異空間では…
「…どうやら完全に、凍りついたようですね…
さぞかし美しい仕上がりになったことでしょう…」
勝利を確信したユリ・カルマは、ゆっくりと雪の塊と化したせるなに近づいた。
勝利に酔っているのか、それともせるなを手中に収めた満足感からか…
ユリ・カルマの6000系マスクの奥からは、心なしか恍惚の表情が垣間見える。
そしてその塊に手を近づけ、雪を払って氷像を見ようとしたその瞬間!!
雪の塊の中から、鋭く何かが飛び出してきた!!
「あぁっつ!!」
油断していたユリ・カルマは避けることができず、まともに左肩に衝撃をくらい、その場に倒れた。
「こ、これは…?!」
衝撃を受けた左肩についた傷は、鋭利な刃物でつけられた傷。
ちょうど機械の部分ではない生身の部分だったため、傷から血が流れ落ちる。
さらに、傷の周辺が火傷のような状態になっていた。
「そ、そんな…私の肉体が…!!
い、いや、それよりも…生きているとは!でも、彼女は刃物なんて使えなかったはず!」
混乱するユリ・カルマ。
視線の先の雪の塊から伸びるのは、槍状の武器だった。
雪の塊から、かすかに声が聞こえる…だが、せるなの声ではない。
トーンの低い女性の声だ。
「ま、まさか影武者?!」
「…あらん限りの残虐技を使ったみたいだけど…残念だったね…」
「私を殺すには至らなかったね…狩魔さん…いや、…レイカさん!!」
「!!」
「…ライジング・サン 発動!」
その瞬間、一斉に雪と氷の塊がはじきとんだ!
氷の塊が勢いよく飛び、ユリ・カルマにも直撃した。
「そ、その名前を知っているとは…いったい…何者だ!」
雪と氷の中から、発動した技の影響と思われる熱があたりに漂う。
その向こうに立っていたのは、せるなではなかった!
マスクはせるなのトーザイブルー仕様とは細部が異なり、また色もオレンジだった。
赤いロングスカートの服に身をまとったひとりの女性が、ユリ・カルマの目の前にいた。
右手に持つのは、先ほどの槍状の武器。
よく見るとそれは、せるなのロッドの三角の部分を逆にして、鋭利な刃物に変形したような武器であった。
「ライジング・サン・・・灼熱の太陽・・・
これを使えば、雪と氷の技などあっという間に溶かしてしまうわ。
せるなの故郷の沖縄も、こんな感じかしらねぇ…」
身構えるユリ・カルマが口を開いた。
「い、一体どんな手品を使った?!」
「手品じゃないわよ。今、ここにいるのはとわいせるなじゃない。私は…」