メトロ☆レンジャー
第9話 〜6〜
「最後に残る者」
赤:RAK(マルノウチレッド)
黄:隼鷹(ユウラクイエロー)
グレー:怪人べるず、ユリ・カルマ等
オレンジ:星海まりむ(=とわいせるな)
(白:ナレーション他)
<前回までのあらすじ>
しおんを救うため、必死に戦うレンジャー隊員達!
異次元に引きずり込まれたせるなは、まりむの力を借りてユリ・カルマと死闘を繰り広げる…
しかし、RAK達の前に帰ってきたのは…
「…私ですけど?」
RAKの視線の先にいたのは…せるなではなかった!
東西線6000系マスクを身につけたゴムタイヤの戦士!
「お、オマエは一体何者だ!ま、まさかせるなは…!」
「な…だ、誰だ!」
「ほう…せるなを討ち取ったのか。さすがだな。」
「当然の結果です」
「あぁ!リーダー!!あれ、あれを見て!」
隼鷹の指を差した先、それは敵の手に握られた、せるなのロッド!
「あれは三角吊革ロッド!!…ということは…!!」
「う、嘘だぁーーー!」
絶叫する隼鷹に対し、いたって冷静なユリ・カルマ。
「これが、現実ですが、何か?」
「ずっと向こうに彼女の遺体がありますが…持参すればよろしかったですか?」
「あぁ、これお返しいたしますわ」
隼鷹に向かって、ロッドを投げつけた。
ロッドを手にした隼鷹の手が震える。
「おぉぉ…信じられん…うわぁぁぁぁぁっ!!」
「隼鷹!しっかりしろ!」
「…運命とは残酷なものだな…でかしたぞ、ユリ・カルマ」
「なに!カルマ??!」
「まさか、あの狩魔さん????」
「そんな…まさか…」
目の前にいる敵が、あの狩魔さん??
狩魔さんが、せるなを殺した??!
様座な思いが頭の中を駆け巡り、2人は事態が把握できなくなってきた。
「ところで、報酬はどうなっているのですか?」
「あぁ、そうだったな…」
「ほ、報酬?!」
「あいつ、雇われていたのか…??」
「心配するな。ドンから頂ける事になっておる。」
「一応、現物を見るまでは…ね。」
「用心深いのは相変わらずだな…」
「そして、ドンはどこに?」
「そんなこと、聞く必要はなかろう…あの方はそう簡単に我々の前には姿を現さぬ。」
「直接、報告しようと思いまして…」
「ふむ」
「いかかでしょう…私も首領あさみ様の寵愛を受けたいのですよ…べるず様」
「!!」
べるずの態度が一変し、右腕の拳をカルマめがけて撃ち放った!
カルマは素早く後ろに下がってかわした。
「?! 何をするのですか?」
「オマエ…カルマじゃないな!
…ヤツは私を様付けなどでは呼ばん!べるず“さん”と呼ぶのだ!」
「正体を現せ!偽者め!!」
「…」
黙ったまま、カルマの体の表面が崩れていく。そして、その中から…!
「!! お、おまえは!」
「あぁっ?!」
中から現れたのは、星海まりむ!
カルマの姿は、まりむの変装だった!
「やれやれ…呼び方を間違うなんて、初歩的なミスをしちゃったわねぇ」
「うまいこと居場所を聞き出して、一足先にドンのところまで行ってやろうと思ったんだけど…」
「あれは…誰だ?!」
「リーダー!あ、あれはとわさんですよ!!」
「何?!どういうことだ!」
「以前、あぁいう姿でいた時代があったのを教えてもらったんですよ!」
「ということは、あれがせるなの別形態なのか!初めて見たぞ。」
「じゃあ、本当に勝ったのは…!!」
「な…カ、カルマはどうした!!」
「私がここにいる以上、答えはひとつでしょ?」
「負けたのは…ユリ・カルマの方よ!」
あのとき…
カルマはもしかしたら、勝利を確信していたのかもしれない…。
だからこそ、私にも勝機はあった…。
その「油断」を、つくことが出来れば…
「さぁ、止めを刺して差し上げましょうね」
天から見下ろすユリ・カルマと、天を見上げるまりむ。
「だめだ…このままでは負ける…あの、あの羽さえ何とかできれば…」
まりむは自分の持つ槍をみて、何かを思いついた。
「(…!一か八か…やるか!)」
まりむは、槍の刃を逆にして、柄の部分をカルマに向けた。
「ほほう、諦めましたかな?」
「そうはいかなくてよ!荒川・竜巻地獄!」
まりむがスイングした左腕から、竜巻が発生する!
「ふ…その程度の竜巻で、私のスピードは止められませんよ」
「とどめ! 倍速S.O.R-Train!」
ユリ・カルマは、これまでに見たこともない速度で突っ込んできた!
「待っていたよ…この時を!」
今度はまりむが、槍を持ったまま猛ダッシュしたと思いきや、槍の柄を地面に突き刺した。
その反動で、棒高跳びのように高く飛び上がるまりむ。
そのまま、自分の発生させた竜巻の中に飛び込んだ!
「?!」
ユリ・カルマは一瞬まりむの姿を見失ってしまったが…その直後!
「うりゃぁぁぁぁぁっ!!」
「!」
「つーかまーえたぁっ!」
なんと、まりむは竜巻で一気に跳躍して、ユリ・カルマの背後をとらえていた!
「これでもう、飛べなくしてあげるよぉっ!死ねぇっ!!」
まりむは、ユリ・カルマの羽を無理矢理力づくでむしりとった!
羽をむしりとられた背中から大量の血が噴き出した!
「あぁぁぁっ!!」
悲鳴をあげ、そのまま急落下するカルマを、すかざずまりむか蹴飛ばした!
「くたばれぇっ!」
蹴飛ばした先には、先ほどの跳躍で刃が上に向いた槍が!
まっさかさまに落下したユリ・カルマの腹の部分に刃が突き刺さった!
「ぐわぁぁっっ!」
背中と腹から出血し、機械部分は制御がきかなくなったのか放電していた。
「はぁ…はぁっ…やったわ!戻れ、槍よ!」
まりむの一言と共に、槍がまりむの手元に戻ってきた。
「さぁ、飛ぶことも出来ず、一連の技は全て封じた!
観念するのはあんたの方よ、ユリ・カルマ!」
満身創痍のユリ・カルマは、ふらふらしながらも立ち上がる。
「くっ…わ、私にはまだ奥の手がある!」
「こんな形で、あなたにお会いしたくはなかったですが…仕方ありません」
「一緒に、死んでいただきましょう」
ユリ・カルマは、残っている機械の部分を自ら炎上させた!
自爆覚悟の大技に出た!
「(こいつ…自爆覚悟で道連れにする気か!ならば…)」
「私と共に、すべてを焼き尽くしましょう…」
ハンマーも持たず、火の玉と化したユリ・カルマはまりむ目がけて一直線に向かってきた!
だが、まりむはその場から動かない。
「やっぱねぇ…火事と喧嘩は江戸の華って言うよね…」
「華はあなたにふさわしいから、譲りますよー!」
まりむが背中から取り出したのは、小型の消火器!
「消火、開始!」
突っ込んでくるカルマめがけて、消火器を噴射!
ひるんだカルマの、消えた火の部分をめがけて、槍を投げつけた!
「一撃必殺!JR・東葉貫通突!」
消えた火の部分…それはちょうど、ユリ・カルマの心臓部の部分だった!
高速で放たれた槍が心臓部を貫き、ついに機械部分が完全に活動を停止!
ユリ・カルマは倒れ、体の中から鍵がこぼれ落ちた。
この瞬間、まりむの勝利が確定した。
倒れたユリ・カルマが、消え入りそうな声で話す。
「…こ、これはおかしいじゃないですか…」
「何がよ…」
「まさか、2人を相手にしていたとはね…私の計算外でしたわ…」
「まぁ、そういうことは言いっこなしってことで。」
「見ていなさいよ…ドンやべるずさんが、貴方達を滅ぼします…
つかの間の命を、惜しみな…さ……い…」
目に涙を浮かべ、震えていたユリ・カルマの体は、完全に止まった…。
その傍らに立つまりむ。
「言われなくても、わかってるよ…」
「私だって、こんな形で、あなたに…会いたくはなかった…
先に待ってなよ…私も…たぶんあなたのところに行くと思うから…」
そして、足元から…ユリ・カルマの体は灰と化して、消えた…
同時に、黄色の壁が消えた。
ユリ・カルマの魔力が消え、異次元空間から難なく脱出できた。
「向こうに、光が見える…あっちに、みんながいるのかな…」
だが、どうしても勝利の余韻に浸る気持ちに、なることはできなかった。
目の前にいたのは、…かつての仲間だったのだから…。
「ユリ・カルマが…負けた…!」
「私自身は止めを刺さなかったけど、もう動けなかったからね…」
まりむは、ポケットから取り出した鍵を、隼鷹に向かって投げつけた。
「隼鷹さん…この鍵を…早く開けて。あと1分もないわ」
「お、おお!」
多少動揺はしているものの、鍵を渡された隼鷹はすぐにカプセルの元に向かった。
神妙な面持ちで、まりむがリーダーの下に歩み寄ってきた。
「…」
「リーダー…」
「なんだい」
「あなたにとって、…私は…なんですか?」
RAKは即答した。
「決まっているじゃないか。」
「たとえ姿が変わろうとも…おまえは…大事な我々の仲間だ!」
「…ありがとう。」
その言葉を聞き、まりむにようやく安堵感が出た。
同時に、いかにせるながリーダー達に信頼されているかもわかると、ちょっと嬉しくなった。
「さぁ、あとはオレに任せて、休んでくれ。」
「えぇ…そうさせてもらうわ…」
まりむはそのまま端へ移動して、座り込んでしまった。
いつしか、そのまま眠ってしまった。
隼鷹が鍵を使い、カプセルの中からしおんのグリーンのバトルスーツを奪還した。
「よし、これでしおんちゃんのバトルスーツも戻ってきたぞ!」
「残るは…しおん救出だ!」