メトロ☆レンジャー

第10話 前編
「リーダーの意地」


:RAK(マルノウチレッド)
:隼鷹(ユウラクイエロー)
グレー:怪人べるず
:とわいせるな(トーザイブルー)

(白:ナレーション他)


<前回までのあらすじ>
しおんを救うため、必死に戦うレンジャー隊員達!
まりむの力を借りて、強敵ユリ・カルマを撃破!

残る最後の強敵は怪人べるず!遂に決着の時が…

「さぁ、残るはお前だけだ!怪人べるず!」

「ふふ…待っておったぞ、この時を!」

べるずから伝わってくる、これまで3人が対面したことの無い圧倒されそうな迫力。
今まで対面してきた怪人べるずや、他の怪人たちとは明らかに違っていた。

「…あいつ…これまでとは違う…!本気だぞ!リーダー!」
「おぉ、わかっているぞ。」


「私は、お前たちからすべてを奪うために、この時を待っていたのだ!」
これまでは終始、RAKの攻撃をかわすだけだったべるず。
そのときはこれまでと別段変わりの無い状態だったが、一転、NAL司令かと思うような気迫。

べるずは着ていたコートを脱ぎ捨てた。
心なしか、某交通局の制服姿のべるずの体がひとまわり大きく見えたのは、RAKだけではなかった。


「あいつ、着やせするタイプだったのか?!」
「隠していたのか…」

これまではRAKや隼鷹と大差の無い体格だったべるずが、レスラーのように大きくなって見える。
RAKはブレードを両手で持って身構えるが、べるずは武器を使う気配が無い。

「…?武器は使わないのか??」

「ふふ、そんなものはいらぬ。」

「何!」

「私にとっての武器は、この体そのものだ。
 さぁ、安らかに眠らせてやるからかかってくるがいい!」


「あいにくだが…死ぬのは、お前だ!」

両者、本気の戦いの火蓋が切って落とされた!






その頃…

NAL司令の入院していた病院では、大騒ぎになっていた。

「いたか?!」

「いません!」

「あんな体で…NALさんはどこへ行ってしまったのだ!!」

「とにかく、探すんだ!!」

病院関係者が慌てふためき、行方不明のNALを探していた。





まだ包帯を巻いたまま、コートだけを羽織って、入院着の姿のままでNALが棒を杖代わりに歩いていた。
方角は、まさに新橋であった。

「い…行かなければ…彼らのために…くっ…」

だが、体力の少ないNALには辛い行程だった。そこへ…

NOiA「あぁっ?NALさんじゃないですか!!どうしたんですか?!」
フィオ「ど、どこへ行くんです?今、お見舞いに行こうとしていたんですが」

NALの前に現れたのは、最近知り合ったパカラー・フィオとNOiA、そして滋賀在住のHIENだった。
今日は家族旅行で滋賀からやってきたHIENを迎撃するため、ちょっとしたオフ会があったらしい。

「お、おぉ…キミタチか…すまぬが頼みがある。」

H:「は、はい!なんでしょう…」

「私を、新橋まで連れて行ってくれ…」

N:「し、新橋ですか?!」

フ:「まさかNALさん、そこまで歩いていこうと…?」

「(いや、そこの駅からJRで行くつもりだったんだが…)」

N:「NALさん、事情はよく分かりませんが、そのまま電車はまずいと思いますよ」

フ:「入院着だからね…」

N:「NALさん、タクシーで行きましょう!!」

H:「ノイアさんお金あるんですか」

N:「今日、ミッキーのスロットで大当たりして、クオカードを金券ショップで換金したばかりだから」

「す、すまぬ…」

フ:「おーい!タクシー!…止まらないぞ…」

N:「よし、奥の手だ!俺に任せろフィオ君!」

H:「ノイアさん何を…」

なんと、NOiAは十八番の「ドデカミン頭上振り回し」を始めた!
すると即、タクシーが止まった!

フ:「す、すごい!!」

N:「さぁ、乗ってください!NALさん!」

得意げのNOiAだが、NALは少し恥ずかしい気がした。

4人で乗り込み、行き先を告げてタクシーが出発!

「(お願いだ…間に合ってくれ…!!)」










RAKは何度も斬りかかるが、その都度べるずにかわされるか、受け止められる。

「くっ…オレの正面斬りをガードした・・・!」

「私はドンに直接手ほどきを受けた。接近戦の戦法は熟知しておる」

「へぇ〜、そうかい」
両手で足を払い、べるずを睨みつけるRAK。

「だけど、オレだって負けるわけにはいかねぇからな!」

「ぬかせ!」

再びブレードを前にべるずに斬りかかるRAK。

「何度きても、同じことだ!」

だが、一転ブレードで斬りかかると見せかけ、ブレードをべるずの前で地面に突き刺した!
ブレードで斬りかかると読んでいたべるずが、急な転換を迫られてバランスを崩す。
一瞬の隙を見逃さず、ブレードを軸にRAKの回し蹴りがクリーンヒット!

「おぉ!すげぇぞリーダー!やっちまえ〜!」

騒ぐ隼鷹を尻目に、着地せずにそのまま回転して今度はローリングソバットのような蹴りを食らわせる!
顔面(マスク)に蹴りが命中し、べるずから初のダウンを奪った。

「うぬぅっ、貴様、ワタシの顔面に蹴りを入れるとは…!」
珍しく、べるずが冷静さを欠いている。

「ほほう、あのべるずが短気を起こすとは珍しい…今だ!リーダー!」

チャンスとばかりにRAKが攻撃に移る。
「かかったな!」

ブレードを右手に持ち、突き刺すように襲い掛かるが…

「かかったのは、お前のほうだ!」

べるずが素早く身をかわし、背中に背負うようにRAKを受け止めて、投げ飛ばした!
RAKは勢いよく地面に叩きつけられる。
「ぐわっ!!」

「背負い投げ…!!」

「おまえの今の蹴りは、陽動であることは分かっている。
 明らかに手を抜いていたからな…その瞬間に分かったのだ。
 これはワタシを倒すための蹴りではなく、怒らせるための蹴りだとな…」


「くっ…」

「(リーダーの読みを更に先読みするとは…完璧な判断力だ!)」





「今度はこちらから、いくぞ!」
猛然とダッシュするべるず向かって、ブレードで斬りかかる体制をとるRAK。

ブレードをスイングし、べるずの右腕に命中!

「やったぞ!」

しかし、その一瞬、ブレードが離れなくなった!
すかさずべるずが左腕でブレードを押さえ、RAKを蹴り飛ばした!

「しまっ…!!」

RAKの手からブレードが離れてしまった!
べるずが同時に放った蹴りでRAKの体を離し、RAKの体をを遠くへ投げた!

「ああっ!!!まさか、…右腕を犠牲にして…??!」

「かかったな!!」

べるずの本当の狙いは、RAKのブレードだった!
べるずはブレードを真上に高く投げる。

「おぉぉぉぉ!!!」
パワー全開で放ったべるずの手のひらから放たれた光線で、ブレードにヒビが!!
ハンドルブレードの柄の部分が、真っ二つに折れてしまった!
そして、同時に光の刃が消えた。

「あ、あれじゃブレードとして使えない!!ただの鉄道マニア向けのガラクタだ!」

「武器破壊技 グランド・大通・クロスだ。」

「さぁ、どうする。武器に頼っていたお前がこの先戦うのか?」

「…やるさ!俺はメトロレンジャー・マルノウチレッド!リーダーだからな!」

「リーダーの意地、というやつか…」

「(リーダー、接近戦得意だっけ…?)」





「くらえ!朝ラッシュパンチ!」
容赦なく襲い掛かるべるずのラッシュパンチに防戦一方のRAK。

「リーダー!反撃しろよー!!(汗」

だが、RAKはしっかりとべるずの腕の動きを見ていた。
「(思い出すんだ…あの山奥での特訓を…!)」

RAKの脳裏に浮かんだのは、あの時山の主と戦った時のシーン。

「(…見えた!)」

べるずがふりかぶった瞬間を狙い、すばやく両足でべるずの頭を掴んだ!

「シ、シザース?!」

「!」

「うらぁっ!!中野坂上シザース!」
RAKはそのまま、べるずの頭を地面にたたきつけた!

「おぉ!両足を挟んでの攻撃…きれいに決まったぞ!!」



「くっ…まぐれかっ!!」

すぐさま襲い掛かるべるずを、垂直ジャンプで素早くかわした。
そしてそのまま急降下し、膝からべるず向かって急降下!

「ぬおうっ!!」
膝蹴りが後頭部に命中し、そのままべるずがダウンした!

「こやつ…ブレードが無くても戦えたのか…!!」

「やったぜリーダー!かっこいいよー!!」
見たことも無い身のこなしと素早い連続技に、狂喜乱舞する隼鷹。





「…」

起き上がったと思いきや、地面にべるずがもぐりだして姿が消えた。

「けっ!リーダーが怖くて地面に逃げ込んだぜ!」

「逃げた?ふっ、せるなに日々怯える貴様に言われるとはな」

「ほっとけ!」

「な、なんだ?」

「何か出てきたぞ!」


「べるずの…腕?」
「!!」
突き出した腕が刃のようになり、RAKめがけて突撃してきた!!



「悪魔殺法 ジョーズトレイン!」



地面から突き出たべるずの腕が、刃のような鋭さで高速で襲い掛かる!!

「うわっ!!」

寸出のところでかわしたRAKに、Uターンでさらに襲い掛かる!

「リーダー!逃げろ!切り刻まれるぞ!!」

今度は逆にかわすRAK。
「くそっ、モーターキルサイクリングよりもやっかいだ!」

「そうやって逃げていられるのも、今だけだ!」

間髪いれず、RAKめがけて襲い掛かるべるず!

「(いかん…このままでは逃げ場が無くなって、切り刻まれる…)」


「(ん…?!あれは…!)」

「危ないリーダー!!」

隼鷹が怖さの余り目をつぶった直後に、物凄い衝撃音が…!!

「リ、リーダー…??」




「…エサにかかったな、ヘボザメが」

RAKが盾代わりに使ったのは、転がっていたシャトールの残骸の一部!

「再生利用は、するもんだぜ!」

べるずの腕をつかみ、無理矢理地面から引きずり出した!

「うらぁっ!!! 雑巾一本釣り!」

なんと、べるずの体を片手で投げ飛ばした!
「うぉっ!」

背中から地面にたたきつけられてべるずがダウン!
「おぉっ、武器が無くても全然やれるよ!!リーダー!」


しかし、息切れしながら膝を突いたのはRAKの方だった!
「ハァ…ハァ…うぐっ」

「どうしたんだ、リーダー!!」

「ふふっ…慣れない肉弾戦に挑んだツケは大きかったようだな」

「くそっ!!」







「うん…」

ちょうど眠りから覚めたせるな。まりむの姿から、元に戻っていた。

「(これは…私は一体…そうだ、異空間でまりむと入れ替わって…)」

起きた目の前では、リーダーとべるずが戦い、傍らで隼鷹が応援しているのが見えた。
すぐに隼鷹に声をかけた。

「隼鷹さん!」

「おぉ!とわさん!元に戻って目が覚めたか…」
隼鷹がせるなの元へ駆け寄る。

「どうなの!リーダーは…」

「ブレードが…いかれちまった…」

「あぁーっ!本当に…」

「どうすれば…」

「どうするも何も、決まってるじゃないの!」

「私たちに出来ることといえば、リーダーの力になってあげることじゃない!」

「そ…そうだ!リーダーはまだ負けちゃいない!」

「当然よ!RAKさんは私たちのリーダーなんだから!」

「おぉ!…そうだ、俺達が近くにいて、少しでも声援で勇気付けないと!」

2人が元の場所に戻り、RAKに声をかける。
「リーダー!武器が無くたって、大丈夫だ!特訓の成果見せてくれー!」
「べるずなんか、ぶっとばしちゃえ〜!」

2人の元気な声と姿に、後押しされるように立ち上がるRAK。
「隼鷹…せるな…心配かけて済まぬ。だが、大丈夫だ…!」

「さぁ、来い!今度はブレードに頼らず、この身でおまえを倒す!」

「(こやつらの結束の力…恐るべし!)」

「ならば、私もおまえの本気に応えなければ、失礼に当たるな…」

「?!」





「おおぉぉぉぉぉぉ!!」
全身からみなぎる気迫が、3人にも感じ取れた。

「み、見て!あれ…!」

「なんだぁ?!」



なんと、べるずの胴体から、さらに腕が生えてきた!!
まるで阿修羅像のように6本の腕になり、それぞれの腕が緑・オレンジ・青のラインが入っている。
さらにマスクの後頭部の側面にも、2つのマスク部分が現れた!!



「さ、3神合体ならぬ、3線合体か!!」

「あ、あの姿で…もしかしてしおんちゃんを倒したのかも…!!」

「な、なんてことだ!まるでクモだ…!!」

「(クモ…原子力?)」
「(それは交渉人!)」




「こ、これがべるずの最終形態…!!」
世にも恐ろしい姿となって目の前に立ちはだかるべるずを目の当たりにしたRAK。

「だが…俺はメトロレンジャーのリーダー!負けるわけにはいかぬ!行くぞ!!」
「かかって来い!」

「リーダー!がんばれー!あと10分だぞー!!」

再び、2人の死闘が始まる。刻一刻と迫るタイムリミット…


両手を合わせて、目を閉じてせるなが天に祈る。
「(お願いです、神様…どうか、リーダーを勝たせてあげてください!)」





「(この戦い…どっちかが…必ず死ぬぞ!)」

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